栽培方法

 

皆生農園では、より安全で、生命力があふれ栄養豊富な、味の濃い農産物を提供するため、農林水産省が平成12年1月に制定した有機農産物に関する法律(有機農産物の日本農林規格)にそい、すべて露地以下のように栽培しております。さらに詳しくお知りになりたい方は研修生用の資料「有機農業の基礎」をお読みください。

安全性

より安全な農産物を提供できるよう、以下のようなことを実践しております。

農薬ーNew

基本的に農薬は散布しておりません。ただし、露地栽培のトマトとミニトマトだけは1~2回散布することがあります。なお、千葉県内の標準的な農薬使用は下段のコラム-1を参照してください。

フェロモントラップでヨトウムシを捕獲しています。

カマキリやテントウ虫などの天敵を活用しています。

防虫ネットを多用しています。

  1. 除草剤 : 使用しておりません。
    農薬に代わるものとして、草対策を徹底しております。例えば、トラクターで耕したり刈払機で刈るほかに、ポリマルチ、防草シート、遮光材などで地表をおおい草の発生を抑えることもあります。
  2. 土壌燻蒸剤 : 使用しておりません。
    農薬に代わるものとして、土壌中の微生物を豊かにするために籾殻や糠などを直接畑に投入したり、連作を避けたり、何も作付けない期間を長くとるなど、各種の対策を継続しております。
  3. 殺虫剤 : 使用しておりません。
    農薬に代わるものとして、防虫ネットの使用、天敵の活用、フェロモン・トラップの使用、防虫対策が施されたハウスでの育苗、天敵の活用、緑肥による囲い込み、草対策の徹底、速やかな畑の片付けなど、各種の方策をとっております。
    それでも虫につかれてしまった場合は、手で捕殺するかその作物を速やかに撤去し、周辺への被害の拡大と後作への伝播を防いでいます。
  4. 殺菌剤 : 使用しておりません。
    農薬に代わるものとして、旬にそった作付け、より良い土壌環境の維持、より適切な施肥と潅水、ゆとりのある植栽密度、輪作、病気に強い品種の選定などを行なっております。
    それでも防げず周辺への被害拡大と後作への伝播が危惧される場合は、収穫中でも被害を受けた野菜やその周辺の野菜を速やかに除去してしまいます。
  5. ホルモン剤 : 使用しておりません。
    ホルモン剤とは、実を確実に着けるため使用される植物成長調整剤で、世界的には農薬に分類されていませんが、日本では農林水産省の「農薬取締法」で農薬に分類されています。
  6. 種苗消毒 : 種苗メーカーから種苗を買う場合、種苗によっては、すでに農薬処理されたものがあります。主に殺菌剤です。
    私どもでは、種苗を購入する場合、できるだけ農薬処理されていないものを購入しております。
  7. 苗消毒 : 行なっておりません。
    基本的に苗は自前の育苗ハウスで種から育てております。
    育苗業者は、だいたい1週間に1回、殺菌剤と殺虫剤をおのおの散布しているようです。トマトのように育苗期間が7~10週間のものであれば、苗の段階だけでも15~20回ほどの農薬使用になることもあります。
  8. 混入 : ありえます。
    肥料としては米糠(こめぬか)と鶏糞をもっとも多く使用しておりますが、これは外部から調達しているために、ごく微量の農薬が混入している可能性があります。
  9. ドリフト : ありません。
    ドリフトとは、自分の農地に隣接する他の農地に農薬がまかれた際、風向きによっては自分の農地にも農薬がかかることです。
  10. 天敵 : 利用しております。
    基本的に自然に生息している天敵を活用しています。
  11. その他の農薬 : 使用しておりません。

コラム-1:栽培方法による農薬使用の回数

  1. 慣行栽培
    日本ではこの栽培が主流です。農林水産省に登録されている農薬であれば、すべて使用できます。ただし、作物ごとに使える農薬は決められています。
    千葉県内の標準的な農薬使用回数は以下のとおりです。(千葉県庁調べ)
    ・米(水田)14回、・トマト(秋から翌年初夏まで収穫する作型)58回、
    ・きゅうり(秋から翌年まで収穫する作型)76回、・苺42回、・梨52回、・大根(秋どり)14回、・人参(秋冬どり)18回、・キャベツ18回、・ねぎ(秋冬どり)38回、・ほうれん草(秋どり)10回、・レタス(春どり)18回、・ブロッコリー14回。詳しくはこちらを「 慣行レベル一覧/千葉県
  2. エコファーマー
    以下の特別栽培や有機栽培のような農薬の使用制限は特になく、手続きさえすれば、比較的簡単に認定されます。詳しくはこちらを「エコファーマー
  3. 特別栽培特別栽培慣行栽培の半分まで農薬を使用できます。詳しくはこちらを「農林水産省特別栽培農産物」
  4. 有機栽培
    農薬の使用が制限されていますが、使えます。詳しくはこちらを「 有機農産物の日本農林規格」

放射能

2012年6月末までに白井市役所が8品目を簡易検査しましたが、放射性セシウム134および137は検出されませんでした。

肥料

農林水産省が平成12年1月に制定した有機農産物に関する法律で使用が認められている肥料のみを使用しております。主なものは、米糠、鶏糞、炭酸苦土石灰、バッドグアノ、貝化石、有機液肥(自家製および購入)、魚の煮汁などです。

コラムー2:栽培方法による肥料の違い

  1. 慣行栽培
    農林水産省に登録されている肥料であれば、どんなものでも使用できます。
  2. 特別栽培
    窒素成分のみ、化学肥料を慣行栽培の半分以下にする必要があります。
    他の成分は慣行栽培と同様に化学肥料を使っても構いません。詳しくはこちらを農林水産省特別栽培農産物と「慣行レベル一覧/千葉県」
  3. 有機栽培
    天然物質又は化学的処理を行なっていない天然物質に由来するものしか使用できません。詳しくはこちらを「有機農産物の日本農林規格」
  4. 注意
    ホームセンターなどで売られている油粕は、ヘキサンを使って油を化学的に抽出しているため、有機栽培では使えません。ヘキサンには毒性があるためです。
    一般に売られている食用油はヘキサン処理されています。
    ただし、圧搾された油粕は、ヘキサンを使用していないので、有機栽培で使えます。

一般的に旬を大きく逸脱した農産物は、農薬使用量が非常に多くなるほか、硝酸濃度が高くなることがあり、安全性に問題が生じる可能性があります。

硝酸は、植物内でたんぱく質に変わるので非常に重要な肥料成分ですが、その濃度が一定量を超えた食物をとり続けると人体に悪影響を及ぼすと言われています。ちなみに、飲料水に含まれる硝酸イオン濃度は10ppm以下と法律で定められています(検索:硝酸とアミン類の食事の組み合わせ) 。

また、いつでもトマトやキュウリが食べられるという食習慣は、人の季節感をなくすとともに、健康上あまり好ましいとは言えません。本来、私たちの体は、暑い季節には主に体を冷やすものを、寒い時期には温めるものを生理的に必要としています。
したがって、私どもでは、お客様の要望があっても、基本的に旬を逸脱した栽培は行ないません。関東平野における野菜の旬を大別すると、以下のようになります。

  1. 果菜類(実を食べるもの)
    夏から秋にかけてです。
  2. 根菜類(芋や根を食べるもの)
    主に秋から翌春にかけてです。ただし、ジャガ芋、たまねぎは主に初夏にとれます。
  3. 葉菜類(葉などを食べるもの)
    ほとんどのものは夏以外です。ただし、南方系のもの(モロヘイヤ、空芯菜など)は夏が旬です。

生育環境

生育環境によっても安全性に違いがでてきます。健康的に育ったものほど、生命力が強くなり、安全性も基本的に高くなります。詳しくは下の「生命力・栄養」で述べます。

収穫前と収穫時の天気

収穫前と収穫時の天気が悪く日照量が不足すると光合成が十分でなく、植物体の硝酸濃度が微妙に高くなります。また、露地栽培では、降雨の直後に葉菜類を収穫すると硝酸濃度が高くなる傾向があります。さらに、栽培方法(つまり生育環境)や農産物の種類によっても硝酸濃度が高くなります。上の「旬」で述べましたように、高い濃度の硝酸は、人体に悪影響があると言われています。
私どもでは、収穫物に含まれる硝酸濃度ができるだけ低くなるよう、天気の推移をみながら収穫しております。

収穫の時間帯

収穫の時間帯によっても、硝酸濃度が微妙に異なります。
私どもでは、できるだけ硝酸濃度が低い時刻に収穫するよう心がけております。

生命力・栄養

栽培期間を長くし、葉数が多いがっちりとした葉物野菜が栄養豊富で、おいしいものです。

私たちは日頃、生き物か生き物に由来する物を食べています。つまり食の本質は、命を頂くこと、命で命をつなげる不断の行為なのです。その頂く命が健康に育ち生命力があふれ栄養豊富であればあるほど、食する私たちの命も健康になります。
私どもでは、そのような状態で食べていただけるよう、以下のようなことに注意を払って栽培、収穫、荷造り、貯蔵などを行なっております。

同じ農産物でも、季節によって安全性だけでなく、生命力と栄養も大きく違ってきます。
例えば、ほうれん草に含まれるビタミンCは、真冬が最高になり、その後下がり続け、真夏には真冬の1割ほどになってしまうそうです。(検索:図解野菜のビタミンの季節変化

生育環境


  1. 光が強いほど、光合成が盛んに行なわれ、健康に育ちます。ただし、光が一定量を超えると、光合成は頭打ちになります。また、強過ぎると弊害を生むこともあります。
    私どもでは、作物どうしの間隔をできるだけ広くとり、おのおのに光が十分当たるようにしております。

  2. 地球上のすべての生物に共通して存在する物質が水です。水こそ命の源と言っても過言ではありません。健康を保つために人間が適量の水を摂取するように、植物も適量の水の摂取が健康に育つためにはとても重要です。多過ぎると軟弱に育ち、少な過ぎると生育が遅れます。露地栽培では、基本的に雨水に頼るため、土中の水分量を常に適切に保つのは簡単ではありません。
    私どもでは、現在6か所の農地を使用していますが、適切な水分量を確保しやすいよう、1か所は水田を畑として使用し、2か所の畑には井戸があり、残り3か所の畑には真夏のみ最少限の水をタンクで運んでおります。また、夏の間はどの農地においても、いろいろなもので地表を極力おおい、水分の蒸散を抑えるようにしております。
  3. 空気
    組成、温度、湿度、流れ(風)が植物に大きく影響します。
    空気の中でも植物がもっとも必要とする物質は二酸化炭素です。一般的に、空気中の二酸化炭素の量を人は調整できません。 自然任せです。(しかし現在、ハウスの中で人為的に二酸化炭素を発生させ収穫量を増やす技術があります。)
    私どもでは、できるだけ生育温度を低く保ち、作物の間隔を広くすることで風を通し湿度を抑えております。これらの逆の状態、つまり高温多湿で風通しが悪い生育環境では、生命力が落ち、簡単に病気になります。
  4. 肥料
    人が摂取する栄養と同じで、おのおのの肥料成分のバランスと適量が重要です。多過ぎても少な過ぎても健康を害します。
    私どもでは、土の肥料成分データを参考にし、野菜や草などの生育状態も観察しながら、できるだけ過不足のないように肥料を施しております。
  5. 微生物
    植物の根は、人の胃腸とほぼ同じ働きをしていて、その周辺の、あるいは根の中の微生物の働きに支えられています。その植物にとって有益な微生物の量が多いほど、植物は健康に育ちます。
    私どもでは、自然の力に頼り土の中の微生物を豊かに、作物にとって好ましい微生物の割合が増えるように努めております。
  6. 毒物
    毒物が少ないほど、もちろん健康に育ちます。人が使う医薬品と同じで、農薬も毒物なので、できるだけ農薬は使わないほうが良いのです。
    私どもでは、上述のように、基本的に農場には農薬を散布しておりません。
  7. ストレス
    人間と同様に、適度なストレスは植物の生命力を高めます。
    私どもでは、過保護にしないよう、細心の注意を払っております。

コラム-3:DNAをつなげる、いのちをつなげる

カボチャには、花粉を作る雄花と実になる雌花が咲きます。生育環境が悪くなると、雄花ばかり咲き、早めに枯れてしまいます。己の短命を知り、てっとり早く己のDNAを他のカボチャに託すのでしょう。この反応は戦争中の人間社会に似ていませんか。

収穫前と収穫時の天気

収穫前と収穫時の天気が悪く日照量が不足すると光合成が十分でなく、生命力と栄養が微妙に落ちます。
私どもでは天気の推移をみながら収穫しております。

収穫の時間帯

収穫の時間帯によっても生命力や栄養が微妙に違ってきます。
私どもでは、できるだけ生命力と栄養が豊かな時間帯に収穫するよう心がけております。

収穫中の工夫

一般的に、農家は収穫物を市販の小型コンテナに入れます。しかし、コンテナは風通しがよく直射日光が当たるため、収穫中や収穫後に収穫物が乾燥し生命力が落ちてしまいます。
私どもでは、コンテナを収穫には基本的に使いません。遮光されたプラスティックの衣装ケースを長年使っております。

収穫後の扱い

  1. 荷造り
    小規模農家の中には、荷造りしやすいように、また袋詰めした後にビニール袋内に水滴がつかないように、あえて鮮度を落としてから荷造りする農家も少なくありません。
    しかし私どもでは、収穫後できるだけ速やかに荷造りしております。すぐに荷造りできない場合は、保冷庫で予冷しておくか、光と乾燥を防ぐため何かでおおっておきます。
  2. 貯蔵
    荷造り後は輸送するまで適切に貯蔵しておきます。気温の高い時期は保冷庫で冷蔵しておきます。そのため、夏場は保冷庫から出すと袋が曇ってしまい、販売時にお客さまが古い野菜と誤解しやすくなります。
    私どもでは、みかけではなく、中身の品質低下を防ぐことに気をつけております。
  3. 輸送
    輸送車はスモークド・グラス仕様ですが、それでも夏場は強い日差しが差し込み生命力を微妙に落とすので、白い布などをかけて輸送しております。
  4. 販売
    収穫から消費までの時間をできるだけ短くするために、直売を基本にしております。生命力や栄養などの品質が落ちかけたものは、基本的に販売しません。販売する場合は、値引き販売します。

コラム-4:生命力の比較試験

葉物野菜をビニール袋で密閉したまま平らに寝かしておくと、生命力の強いものほど早く葉をもたげます。また、白菜を半切りしビニール袋で密閉したままカットした面を上にして寝かしておくと、生命力の強いものほど早く中心が盛り上がってきます。
一般的に、ほとんどの消費者はこのような状態になった野菜を古いとみなすため、生命力のあふれる野菜の販売は不利になることがあります。

おいしさ

皆生農園の人参の色が濃いのは甘く栄養豊富なためです。

人間の味覚の原点は「甘み」で、それ以外の味覚には個人差が相当あるため、おいしさに優劣はつけにくいものでが、私どもが追求する農産物のおいしさとは完熟の味です。 濃い味です。そのような農産物を速やかに消費者にお届けできるよう、主に以下のようなことを実践しております。

コラム-5:トマトの試食

かつて、ある出荷組合の職員7名を対象に、完熟した状態で収穫した露地トマトと未熟の状態で収穫し追熟させた露地トマトの食味試験をしたことがあります。その結果は味覚の本質をうかがわせるものでした。
農家出身の者3名は全員が完熟トマトをおいしいと言い、非農家出身4名全員が未熟トマトをおいしいと答えたのです。
完熟トマト、特に露地栽培の完熟トマトは、甘さに加え酸味がのるため、その甘さを舌が感じにくくなります。
その一方、一般に売られている生食用トマトは、ほぼ100%がハウス栽培で、ほとんどは緑色の残る未熟状態で収穫されたトマトであるため、酸味が薄く相対的に甘みが目立ちます。したがって上述の試食のように、このような未熟トマトを小さい頃から食べていた非農家出身者はおいしいと感じたのでしょう。

 


  1. 本来の栄養と味を求めるのであれば、旬の時期に栽培し収穫するのがまず前提となります。
  2. 生育環境
    生育環境によって味が大きく異なることがあり、安全性、生命力、栄養を落とさないように気をつけつつ、味が濃くなるように生育環境を整えております。
  3. 試食
    味の違いがでやすいものは、特に頻繁に試食しております。
  4. 収穫の適期と時間帯
    農産物には、栄養価が高まり味が濃くなる頃、いわゆる収穫適期がありますが、スーパーや生協など、一般に流通している野菜は収穫適期よりも早めに収穫されます。収穫から消費までの日数が長いためです。また、収穫の時間帯も市場や販売店などの流通業者の都合に合わせるのが一般的です。
    しかし私どもでは、栄養価が高まり味が濃くなるまで収穫しません。その収穫適期は、オクラや夏場の胡瓜(きゅうり)の場合、ほぼ半日です。したがって、収穫には熟練を要します。また、収穫時間帯によっても味が変わるので、この点にも注意を払っております。
  5. 即売
    上述のように収穫適期の限界まで待って収穫するため、収穫から消費までの時間を極力短くする即売方法をとっております。即売しないと時間の経過とともに、硬くなったり逆に軟らかくなることもあるためです。
  6. 貯蔵
    カボチャ、さつま芋、ジャガ芋などは一定期間貯蔵しておくと、味が濃くなり、甘みが増すので、このような農産物はできるだけ長期間貯蔵しております。