百姓雑話

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第213話 発展の代償(1)

物心がついた昭和30年代は、私の故郷兵庫県飾磨郡(今は姫路市)でも戦後の貧しさが残る時代でした。ご飯は白米と麦が半々で、肉といえば筋の入ったクジラがほとんどです。おやつは庭先のカキやグミといった自然のおやつで、隣村の雑貨屋の甘いお菓子など数...
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第212話 新たな挑戦

私は、大学で湖沼の微細藻類を研究し、環境コンサルタント、廃棄物処理会社を経て、藻類から油を作るベンチャー企業に転籍しました。皆生農園には今年の3月より、週1回土曜日に来ています。1年弱の研修の中で、種まき、定植、片づけなど多くの作業をやらせ...
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第211話 運と縁

「私は本当にいい時代に生きた」と常々思っています。大変だったことと言えば、大学の受験くらいでした。大学に入ってしまえば、さほど勉強しなくても卒業でき、無試験で就職できました。バブル崩壊後のように就職活動に追い立てられることもなければ、大学院...
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第210話 長い旅路の先

厳しく冷え込み、大地一面が霜に覆われている。そんな早朝、農場に入る道端に目をやると、タンポポがひっそり咲いていた。特に日当たりが良い所ではないのだが、たくましく花を咲かせる姿に強く心をうたれた。他の草に負けないこの時期に、あえて咲いたのかも...
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第209話 四つの平等は

暮れも押しつまり、暖冬とはいえ、寒さが身にしみる。農作業を終え家路につく頃は、もう真っ暗である。澄み切った夜空に輝く星たちを見上げると、難民キャンプでの生活を思い出すことがある。そこには電気がなかったので、日が落ちると一気に暗くなる。無数の...