第212話 新たな挑戦

百姓雑話

私は、大学で湖沼の微細藻類を研究し、環境コンサルタント、廃棄物処理会社を経て、藻類から油を作るベンチャー企業に転籍しました。

皆生農園には今年の3月より、週1回土曜日に来ています。1年弱の研修の中で、種まき、定植、片づけなど多くの作業をやらせてもらっています。夏の炎天下での作業はちょっと過酷でしたが(体重が3kgほど落ちました、ダイエットを希望の方にはおすすめです)、季節の移ろいを感じながら、植物や大地に向き合うことに喜びを感じています。

私が皆生農園でお世話になるまでの経緯について簡単に述べたいと思います。子供の頃から環境保護にかかわる仕事をしていきたいと考えていました。上述のように、これまで研究者を目指した時もありますし、会社員として環境関連の一般企業に勤めていた時期もあります。そんな中で30歳を過ぎたころから、農業への思いが強くなってきました。自然や田舎への憧れが常に心の中にあるように思います。2、3年ほど前、100坪ほどの土地を借りて家庭菜園をしていた時も、のどかな風景に癒されました。いつか農業をしながら生活をしたいという願望はここ数年ずっと抱いてきました。現実から逃避しているだけかもしれませんが、職人のように土や自然に接して仕事をすることが自分の性分に合うのではないかという考えもあります。

ここ2年ほどは、ソーラーシェアリング(農地にソーラー・パネルを高い位置に設置し、野菜と電気を得るシステム)を企画していましたが、どのように農業で収益を上げるかが悩みの種でした。そんな時にインターネットで見つけたのが皆生農園のホームページでした。そこに載っている鴇田さんが書かれた「有機農業の基礎」には、農業に関することばかりでなく、例えば仕事に対する精神面などについても書かれていて、鴇田さんの温かい人柄がにじみ出ており、お逢いする前から非常に共感する部分が多いな、と感じていました。

私の大きな目標は鴇田さんと共に、皆生農園の事業モデルを広く展開していきたいという事です。環境への負荷の少ない方法で栽培した野菜を地元の駅やスーパーで販売するスタイルは地産地消モデルとして素晴らしい取り組みです。

皆生農園の野菜をスーパーで売られている一般の野菜と比較して、特別においしいということは正直感じません。普通の味を提供しているといった感じでしょうか。しかし、味は普通でも、安全性が高く安心できる物を手頃な価格で供給したいという鴇田さんのポリシーに合致する野菜と思っています。

お昼時には、採れたての野菜をふんだんに使った鍋料理をいただくのですが、簡素ながらとても美味です。その時には鴇田さんの将来の構想や世界の情勢など幅広い話題が飛び交い、とても楽しいひと時です。相談ごとに乗ってもらうこともしばしばあります。

(文責:塚田 創)