鴇田 三芳

百姓雑話

第210話 長い旅路の先

厳しく冷え込み、大地一面が霜に覆われている。そんな早朝、農場に入る道端に目をやると、タンポポがひっそり咲いていた。特に日当たりが良い所ではないのだが、たくましく花を咲かせる姿に強く心をうたれた。他の草に負けないこの時期に、あえて咲いたのかも...
百姓雑話

第209話 四つの平等は

暮れも押しつまり、暖冬とはいえ、寒さが身にしみる。農作業を終え家路につく頃は、もう真っ暗である。澄み切った夜空に輝く星たちを見上げると、難民キャンプでの生活を思い出すことがある。そこには電気がなかったので、日が落ちると一気に暗くなる。無数の...
百姓雑話

第208話 豊かな農地

記録的に暖かい秋が続いてきたが、やっと霜が降りはじめた。また今年も、農地を肥沃にするため、畑に米糠(こめぬか)ともみ殻を入れ始めた。いわゆる「土づくり」である。かれこれ15年ほど前から私は、積極的に米糠ともみ殻、それに堆肥を畑に入れてきた。...
百姓雑話

第207話 ためる

今から35年ほど前、電子部品を製造する会社で5年間ほど働いていたことがある。週休2日であったが、入社2年目から特定の仕事を任された関係で残業と休日出勤が常態化し、基本給は安くても手取りの給料は悪くなかった。事業所が田園地帯にあり敷地内の寮に...
百姓雑話

第206話 落ちる

秋も深まり、落ち葉が積もっている。悩ましい雑草も、ほとんど枯れ種を大地に落とし、命を明日につなげた。この頃になると、越冬野菜の作付けもすべて終わり、「今年も元気に働けて本当に良かった」という感謝の念をいだく。ところで、「落ちる」という言葉を...