第416話 微生物とともに生きる

百姓雑話

顕微鏡の発明によって、人類は肉眼では見られない微生物の存在を知りました。微生物は、光合成を生命活動の源とはしていないものがほとんどです。その数は動植物よりも桁違いに多いようです。その多種多様性のために、厳しい環境下でも生きているものもいます。例えば、高温の温泉、熱水鉱床、強塩湖、地中深くなどでも生き延びています。

農地の土壌中にも、微小動物、菌類、細菌、ウィルスなどの多種多様な微生物が生息しています。光合成をしている微生物を除けば、すべての微生物は有機物や他の微生物を餌にして増殖していきます。そして、長い年月をかけて、無数の微生物と植物などが肥沃な土を作ってきました。

しかし、現代農業のように化学肥料だけで育てていると微生物の餌が不足し、その種類と数は減少します。くわえて、農薬を多量かつ継続的に使っていると、微生物はさらに激減し、農地はやせてしまいます。

それらの微生物は、植物に有用なものもいれば、被害を与えるものもいます。これらの中間的な微生物、つまり、有用でも有害でもない微生物もいます。人間で言えば、善玉菌、悪玉菌、日和見菌に相当するでしょう。

このように、作物は多種多様な無数の微生物と影響し合い共生して成長しています。したがって、農作物を生産する時に大事なことは、作物にとってより良い微生物環境を整えることが重要になります。

微生物は、植物だけでなく、動物にとっても非常に重要な存在です。人間の消化器内や体表などにも人間自体の細胞よりも多くの微生物が棲んでいます。

とりわけ、腸内の微生物が人の健康にとって極めて重要と近年指摘されています。腸内微生物は、単に食物の消化吸収を助けるだけではなく、人の健康維持に多種多様な影響を及ぼしているようです。腸内細菌による病気をもつ患者に対して、健康な人の便から採取した細菌を患者に移植する治療もおこなわれています。

このように人間の健康を大きく左右する腸内微生物は食べ物の内容や薬剤に影響されています。抗菌剤を飲めば、腸内細菌も減ってしまいます。自分の細胞の数よりも多い微生物との共生なくして、人間は生きていけません。

植物も人間も同じです。微生物との共生を無視した近代農法は人類の未来を危うくしています。

(文責:鴇田三芳)