鴇田 三芳

百姓雑話

第21話 アブラ虫とグレート・ジャーニー(2)

人生は旅である。人の一生は、長い人類の旅の短い途上である。 皆生農園は、成田と羽田を離陸したジェット機がちょうどクロスする真下にある。多い時間帯では、1分に1機ほどの割合で飛び交う。私は、仕事の手を休め、ときどき見上げては、また一人旅に出た...
百姓雑話

第20話 水は命

水は、実に不思議な物質である。酸素(O)の両脇に水素(H)が1個ずつ結合しているが、への字のように曲がってついている。きわめて特異的な結合のため、分子の周囲が電気をおびる。これが、水の不思議の原因であり、命の源となった理由と思われる。 とこ...
百姓雑話

第19話 アブラ虫とグレート・ジャーニー(1)

ゴールデン・ウィークは非常に忙しい。田植えのシーズンだからだ。皆生農園は、稲作を委託しているので田植えはないが、春野菜の収穫と夏野菜の植え付けに早朝から夜中まで働く。育苗ハウスは約20種類の苗で埋まっている。遅霜の心配がなくなる5月初めから...
百姓雑話

第18話 育児

やっと春めき、ヒバリがさえずり始めた。スペインのカタルーニャ地方では「ピース、ピース」と鳴くという。 去年、ヒバリが私の畑に産卵したが、結局1羽も巣立てなかった。2個は何かに食べられてしまい、最後に残った1個も、多分、親鳥が育児放棄したよう...
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第17話 ある少女の死

去る3日、台風並みの暴風で目も開けられないほどの土埃が吹き荒れた。研修生2名とともに強風対策をしながら、ふっと20年数前の体験を思い出した。 1985年10月、私は難民救援団体のスタッフとして難民キャンプに赴いた。場所は、アフリカ北東部の辺...