鴇田 三芳

百姓雑話

第4話 光の春

昨日が大寒であった。関東地方では、この頃から2月中旬頃までがもっとも気温の低い時期だ。特にこの冬は近年になく寒い。ひと冬分の寒さをもう体感した気がする。温暖化に慣れたためか、作物の寒さ対策がつい後手に回ってしまった。 しかし気温は低くても、...
百姓雑話

第3話 ホトケノザ

寒の内というのに、陽だまりではホトケノザが満開である。 名前の由来は仏様が座っておられる台座に葉の形が似ているらしい。この草は、その形だけでなく、情け深い点からも仏様のようだ。というのも、寄生したアブラ虫を養い越冬させるからだ。アブラ虫にと...
百姓雑話

第2話 空気

人は空気を吸う。ごく当たり前のことである。生まれたばかりの赤ちゃんでも、何よりも先に呼吸しようと努力する。生死がかかっている。生きるうえで空気がもっとも重要である。食の安全性よりも重要であると私は思っている。 では、私たち大人はどうであろう...
百姓雑話

第1話 縁

人には何かの縁がある。 若い頃は、縁などまったく意識しなかった。未来は、才能と努力の結果として、誰にでも開けてくると信じていた。多少の運、不運はあっても、縁に依拠した生き方はしたくなかった。 しかし、農業を始めた頃から、運を肯定するようにな...