農業の現実

百姓雑話

第201話 文明の代償

私は便利さや快適さとはまったく無縁の農村地帯で生まれ育った。土間に積まれたレンガの竈(かまど)で藁(わら)や木くずを燃やし日々の食事を煮炊きした。お風呂も鉄製の風呂釜、いわゆる「五右衛門風呂」で、井戸水を満たし籾殻(もみがら)や落ち葉を燃や...
百姓雑話

第200話 学びの先に

学ぶことは真似(まね)ることから始まる。 明治維新の前後から、日本人は西洋文明を盛んに真似てきた。特に工業に関しては、「富国強兵」とか「脱亜入欧」などという勇ましいスローガンのもと、血眼になって物真似した。その姿勢は敗戦後の復興期にも引き継...
百姓雑話

第196話 未来を買う

未来は誰でも買える。 自分の未来がどうなるのか誰もはっきりと予見できないものの、日常的に未来を買っている。日本でも経済が右肩上がりの時代は特に、個人も企業も国家も、社会全体で盛んに未来を買っていた。そして、そのことで生活の質が全般的に向上し...
百姓雑話

第195話 心の支え

天職と思って始めた農業だが、毎年この頃になると心が折れそうになる。「もう農業をやめたい。サラリーマンとして現金収入を得ながら、家庭菜園でのんびり野菜を作り快い汗を流すほうがいい」と今まで何度も思った。語り尽くせぬ苦労と多額の投資の末にやっと...
百姓雑話

第194話 稲作

稲刈りが始まった。黄金色の稲穂が北寄りの涼しい風に揺れている。瑞穂の国を象徴するような光景である。幸いにも、今年は台風の被害がなかったので、おいしい良質米がきっと採れるだろう。 ところで、農業は「装置産業」と言われることがある。今では、昔の...