第229話 いのちをつなげる

百姓雑話

写真のように、越冬ブロッコリーが満開です。3月中旬に頂花蕾(ちょうからい:一般に売られているブロッコリー)を収穫した後も、次々に脇芽のブロッコリーが出てきて収穫しきれず、花盛りになってしまいました。収穫されても採られても、湧き出てくる脇芽を見ていると、必死に子孫を残そうとする生命力を感じます。

先月4日、この季節としては非常に強い寒気が関東地方以北を襲いました。早朝の畑は霜で一面真っ白でした。この日の白井市の最低気温は日本気象協会によると3.2℃でしたが、このデータは地上1.5mの位置で測定したもので、それも恐らく市街地での値でしょう。同じ市内でも、皆生農園の農場は都市部から離れた田舎にあるため、かなり冷えます。実際この日、畑の地表付近ではマイナス5.2℃まで下がりました。真冬並みの気温です。前述の気象協会の公表した値よりも8℃以上も低いことになります。毎年この頃は、程度の差こそあれ、季節外れの寒気が南下し遅霜が降りるので、前日に可能なところは全て対策しておきました。

しかしそれでも、芽の出たばかりのジャガ芋の一部に被害が出てしまいました。被害の1週間後、芽が枯れてしまった芋を掘り起こすと、どれも写真のように子芋が数個ついていました。親芋(種芋)が早死にしそうになり、確実に子孫を残そうと早々に子芋をつけたのかもしれません。

皆生農園のある白井市は梨の栽培が有名ですが、バブル経済が崩壊した1990年代から梨の需要と価格が減り続け、ほとんどの梨農家はまともに利益が出ない状態が続いてきたと聞いています。そのため近年、市街化区域内にある梨農家は次々に梨園をつぶし宅地化し、住宅街があちこちにできました。営々と手を加えられてきた梨の木も、人の命をつなげるために、その命を断ち切られてしまいました。何か、人の世の縮図を見るような気がします。

(文責:鴇田 三芳)