最大の原因は職業として農業を営んでも喰っていくのが難しいからである。
農業所得だけでは喰えなくなった農家は他の手段で生きのびてきた。息子や娘を給与所得者にしたり、営農者自身も農閑期に他の職業で給与を得たり、アパートや駐車場から不労所得を得たり、はては農地を宅地化し巨額の現金を手にした。これらの機会に恵まれなかった農家は農業に見切りをつけるしかなかった。そして、地元に他の仕事を見つけられなかった者のほとんどは農村を去っていった。過疎化の主因である。
さらに、農業所得の少ない原因を深く探ると、いくつかの原因が見えてくる。農地と気象の条件が悪いことである。
山がちで人口密度の高い日本では、少なくとも5つの指標において、農地がきわめて狭い。5つの指標とは、総農地面積、国土面積あたりの農地面積率、人口あたりの農地面積、一経営体あたりの耕作面積、そして、農地一筆(一枚)あたりの面積である。
たとえば、日本がもっとも食料を依存しているアメリカは、総農地面積が日本の約9倍、国土面積あたりの農地面積率は日本の約3.5倍、一経営体あたりの面積は70倍以上である。オーストラリアにいたっては、総農地面積が日本の約90倍、一経営体あたりの面積は何と約1300倍以上となっている。
くわえて、日本の農地の多くは土質が悪いという欠点もある。
日本は気象条件も厳しい。農産物の生産で不可欠な水に恵まれている反面、集中豪雨や洪水、台風による暴風雨、長雨や積雪などの自然災害が頻発してきた。近年は少雨と大規模な高温被害も増えている。農林水産省によると、台風の被害が大きかった2019年の農業被害額は約2500億円で、この年の総農業生産額の約3%となった。
このように日本は、農産物輸出大国よりも農地の条件が著しく劣り、気候や自然災害のリスクに脅かされ、おのずと生産効率が悪くなる。くわえて、輸入農産物の低価格圧力によって国産物の価格が抑制されるので、農家の所得は低く抑えられてしまう。
少ない農業所得が続いてきた原因は他にもたくさんある。戦後のアメリカの食料戦略とそれにともなう洋食化、第二次産業・第三次産業への産業構造の転換、不適切な農業政策、機械化による経費の増加、農業に対する消費者の関心の低さ、過度の清潔癖、多様性に対する理解の少なさ、肉体労働の軽視、外食とファストフードの増加、1990年代のバブル経済の崩壊から続く実質賃金の低下による購買力の減少。これらは明らかに農民の所得を低下させてきた。
最後にもう一つ、日本農業が衰退した原因を指摘するなら、それは農業の過酷さである。
(文責:鴇田 三芳)

