第241話 ラブ・ソング

百姓雑話

皆生農園は自然豊かな農村地帯にあります。四季の移ろいが手に取るように実感でき、命の営みが身近なところで日々展開しています。喧騒(けんそう)にまみれバーチャルな世界に満ちた都会とは対極の世界です。

そのため、春から秋にかけて、動物たちのラブ・ソングが絶えません。早春のウグイスから始まり、カラス、ヒバリ、カッコウ、ホトトギス、カエル、セミと続き、コオロギなどの昆虫の鳴き声とともに秋も深まっていきます。肉体的につらい作業をしている時でも、彼らの声を聞くと、ほっと心が癒されます。

これらの中でも、「ホー ホケキョ」とさえずるウグイスのオスがトップ・シンガーと言えるではないでしょうか。この鳴き声、ほとんどの人は、春だけと思っておられるでしょうが、実は夏にかけてずっと鳴いています。まるで常に発情しやすい人間の男のようです。そしてウグイスは、「ホー ホケキョ」の他にも幾種類かの鳴き方をします。例えば、「チーーーーーーー、 チチョ、チチョ、・・・・・・」や「チチチチチ・・・・・・・」などとも鳴きます。

私たち人間の世界でも、男はラブ・ソングを好んで口ずさみます。そして、歌のうまい男は女にもてます。かつて、アリスの谷村新司氏が「あの頃、女の子にもてたい一心で歌ってた」と述懐(じゅっかい)していました。ほとんどの男性歌手の内心を代弁しているでしょう。

しかし、なぜ歌が上手なオスや男が異性にもれるのでしょうか。また、同じ類人猿でもチンパンジーやゴリラ、オラウータンはなぜラブ・ソングを歌わないのでしょうか。不思議です。

自然豊かな環境に暮らし、身近なところで命の営みに接していると、わからないことが次々出てきます。

(文責:鴇田 三芳)