第381話 5つの脅威(1)

百姓雑話

30年近く農業を続けてきた私でも、なかなか越えられない脅威はいくつもあります。なかでも非常に厄介なものが5つあります。具体例をまじえながら、以下に述べます。

まず筆頭は気候や天気です。先週末に本州南岸を通過した台風2号によって、当地でも300mm以上の豪雨がありました。畑の低い部分は沼のようになり、傾斜地では土壌が流亡し、トウモロコシは豪雨と強風でなぎ倒される始末です。

就農以来、6月に台風被害があったのはこれで3度目になります。10年ほど前に、同じ年の6月に2度も台風が襲来し大きな被害がでました。下の写真のように、夏野菜のトマトやナス、ピーマンなどはボロボロ。正直、農業をやめたくなりました。

20年ほど前には、4月と5月に雹が降り、2度目のときは雪が積もったように一面真っ白。これまた夏野菜を中心にほぼ全滅状態になってしまい、この時も挫折の一歩手前でした。

今まで経験してきた自然災害をあげれば、一日中でも話せます。

二番目は害虫と病気に代表される生物の脅威です。農薬を使わない私にとって、特に害虫の脅威は未だに克服できていません。ここ2週間くらいは、地中に潜んでいるネキリムシとヨトウムシを研修生とともに一匹一匹つぶしています。どうすればこれらの害虫を発生させないで済むかはわかっていても、その対策を徹底できない結果です。「わかっちゃいるけど、やめられない」のです。

20年ほど前にハウスの中でヨトウムシを大発生させてしまったことがあります。地中にもぐっている蛹(さなぎ)を捕殺したのですが、なかなか取り切れず、農場で飼っていた番犬に探させました。結果はほぼ完璧。犬の嗅覚には驚嘆しました。

以前、ある研修生が辞めるとき、「何の作業が一番つらかったか」とたずねたら、案の定、ヨトウムシの捕殺でした。誰でもこんな作業はしたくありません。農薬を1回かければ済むことなのですから。

三番目は体力の衰えです。私は昨年70歳(古希)になりました。体力の衰えは年々早くなり、体重は減り続けています。80歳まで営農したいという目標を達成できるか怪しくなっています。冒頭の気候や天気の脅威と体力の衰えは辞めるまで越えられないでしょう。

(文責:鴇田 三芳)