第253話 里芋の季節

百姓雑話

サトイモ畑と女性10月も下旬になると、畑を吹き抜ける風がかなり冷たく感じられます。体を冷やす夏野菜に代わって、体を芯から暖めてくれる根菜の煮物が食べたくなる季節が来ました。そこで、里芋の出番です。

里芋は3月から4月末頃までに卵大の芋を植えます。その種芋の真上に親芋がまずでき、その親芋の周囲に子芋が次々できます。子芋が大きくなると、子芋の周囲にも芋ができます。孫芋です。生育環境が良ければ、写真のように人の背丈ほどにもなり、親芋は2kgくらいに、販売できる子芋と孫芋の合計は1.5kg以上にもなります。

里芋の場合、食用として流通するのは子芋と孫芋です。親芋は、食べれば食べられるのですが、飽食の時代になってからは畑の片隅に捨てられてしまいます。その理由は、親芋には里芋独特のヌルヌルした食感がなく、どちらかと言えば八つ頭を硬くしたような「ゴリゴリ」という食感になっているためと思われます。余談になりますが、里芋の仲間には、八つ頭、セレベス、とうの芋、京芋などがあり、八つ頭やセレベスは親芋を、とうの芋や京芋は親芋も子芋も食べます。

昔はそんな親芋でも、でんぷん加工用として業者が買いに来たそうです。太古より人類は、常に飢餓の脅威にさらされ、食料の獲得に悪戦苦闘してきました。歴史の記録がある時代だけでも、食料を奪うために何度も何度も紛争や戦争を繰り返してきました。かつて日本が中国の満州を侵略した主因も食料不足の解消でした。

第二次世界大戦後、品種改良や機械化、耕作地の拡大などを世界的規模で続けてきたにもかかわらず、今でも世界のあちらこちらで飢餓にさいなまれている人たちがいます。

そんな飢餓の時代にあって、十分食べられる里芋の親芋を捨てるなんて、実にもったいない話です。我が家では親芋を、大きくて調理が楽ということもあり、普通に食べています。少しゴリゴリとした食感でも、そういうものだと納得して食べれば、まずくはありません。また、割安の値段をつけて直売すると、買ってくださる方もおられます。

親芋の利用方法は他にもあります。翌春、種芋として使う子芋の代わりに、親芋を使うのです。かれこれ10年以上も前から私は親芋も植えてきました。ただし親芋は、とても大きいために、植えるのに手間取ります。加えて、芽がたくさん出るので芽かきをする必要があります。しかし、子芋よりも貯蔵栄養量がはるかに多いので力強く生育し、当然、秋には里芋がたくさん採れます。

里芋の親芋はほんの一例で、何のかんのと理由をつけて、私たちは食べられる物を気安く捨てています。国の統計によると、米の収穫量よりも多くの食べ物を日本人は毎年捨てているそうです。

はたして日本人は今でも、「もったいない」という美徳を持っているのでしょうか。たぶん、その答えは都会のカラスやタヌキが教えてくれているのでしょう。

(文責:鴇田  三芳)