記録的に暖かい秋が続いてきたが、やっと霜が降りはじめた。また今年も、農地を肥沃にするため、畑に米糠(こめぬか)ともみ殻を入れ始めた。いわゆる「土づくり」である。かれこれ15年ほど前から私は、積極的に米糠ともみ殻、それに堆肥を畑に入れてきた。3・11の放射能漏れによって山積みしていた堆肥とその材料が汚染された後は、米糠ともみ殻だけを畑に直接混ぜ込む方法をとっている。
写真のように、まず米糠を10aあたり1トン以上まく。米糠は土の中でゆっくり分解し、作物の肥料(=栄養)となるだけでなく、その分解の過程で土の中の微生物を急激に増やす。条件によっては、微生物の数が桁違いに増えることもある。それらの微生物のすべてが野菜にとって好ましいものばかりではないので、できるだけ好ましい微生物の割合を高めるのがポイントとなる。
米糠をまいた後、もみ殻も米糠とほぼ同じ量をまき、速やかにトラクターで耕す。もみ殻をまくのは、米糠と同じ目的もあるが、土の通気性を良くすることが主たる目的である。米糠を土に直接入れると土が固化してしまうので、一緒にもみ殻も入れる必要がある。
このような土づくりは寒い季節にしかできない。味噌やお酒を造るのと同じ理由である。それ以外の季節にまくと、暖かいために、作物に有害な菌の繁殖が優勢になってしまうからである。また、暖かい季節にまくと、米糠やもみ殻が土の中で分解する初期段階で発生する臭いに害虫が寄ってきて土に産卵し、その幼虫や成虫が作物に悪影響を与える。さらに分解が進むと、異臭を放つカビが繁殖し、吸い込むと明らかに有毒であることがわかる。土がこんな状態の時に野菜を作付けると発芽や生育に支障をきたす。この点からも、作付けのない冬場にしか米糠をまくことができない。
上述のような一連の作業は、機械を使わない場合、かなりの力仕事である。規模の大きな農場で行なう場合は、機械を導入した方が良い。新品でも、100万円くらいで済む。丁寧に使えば20年以上は使えるので、決して高い買い物ではない。無理して腰痛にでもなれば、元も子もない。
痩せた土を肥沃にするには、このような努力をしても、相当な期間が必要である。毎年入れ続けても、少なくても5年はかかる。ここ10年ほど前から、いろいろな企業が農業に参入した。しかし、撤退の連続で、満足な経営状態で生き残っている企業は多くない。その主な原因の一つが、この点である。土に依拠した農業をしようと思えば、土づくりが重要で、それには長期的な取り組みが欠かせないのである。
(文責:鴇田 三芳)