「二番穂」という稲の穂があります。学術的には「再生稲」と言われ、稲刈り後に地中に残った株から再び芽を出し実った穂のことです。下の写真は11月中旬に撮ったものですが、立派に実っています。
この二枚の写真から、あなたは何を感じとられますか。
まず私は温暖化を感じとります。私が就農した30数年前ごろは、10月中には枯れてしまい、ほとんど実入りがありませんでした。植物は気候の変化に正直です。
また、「もったいない」と痛感しています。日本では、この二番穂が利用されることはほとんどなく、トラクターで土に鋤込(すきこ)まれます。特に今年は、米不足で去年に比べ50%ほども値上がりしているだけに、なおさら感じてしまいます。
その一方で世界に目を向ければ、この二番穂を人の食用として活用しているところもあります。東南アジアです。国際農研(国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター)によると、再生稲による水稲二期作栽培(本作+再生作)は、いくつものメリットがあるようです。詳しくは以下のホームページを参照してください。
近年、インドネシアの西スマトラ州における研究では、本作と同レベルの収量(1ヘクタールあたり6~7トン)を連続的に繰り返す多年生稲栽培(現地名SALIBU)が報告されました。日本の平均収量とくらべ、この6~7トンという収量は同等以上です。インドネシアは熱帯多雨地帯という条件に恵まれていることもありますが、大いに希望が持てます。
人類史をふり返れば、食料争奪の戦いをくり返してきました。明治維新後を見ただけでも、日本は、食料難による口減らしのために、北南米やハワイに移民させ、満州に多くの農民を入植させてきたではありませんか。結局、愚かにも戦争に突き進み、広島と長崎への原爆投下を招きました。
食料自給率が40%にも満たない日本で、どうして二番穂の利用が進まないのか不思議でなりません。
(文責:鴇田 三芳)