第292話 猛暑を乗り切る

百姓雑話

前話「長い闘い」の続きで、猛暑を乗り切るために私が長く実践してきた方法を述べたい。暑い中での作業に慣れていない新規就農者の参考になれば、何よりである。

かれこれ四半世紀前、新規就農しようと脱サラし、私は専業農家で実習を始めた。その1年目の夏、実習先の主人が昼寝している間、畑の一角を使わせてもらい、いろいろな野菜を自分なりに栽培してみた。そして、その一件は、真夏の昼下がりに起きてしまった。まったくの初心者であるにもかかわらず、炎天下で作業をしていたため、熱中症でふらふらになり救急車で搬送されたのである。幸い命に別状はなかったが、その経験から体調管理の重要さを悟り、その後、少なくても次の4つのことに気を配っている。それは、①飲食、②睡眠と休息、③仕事の仕方、④体温調整と服装である。その甲斐あってか、体重50kg弱のきゃしゃな体でも、その後一度も夏バテで寝込んだことはない。

飲食。もとより、猛暑に関係なく、喫煙は論外である。まず、体を酸性にするような物は、できるだけ飲食しない。例えば、アルコール飲料、甘い食べ物や飲み物、消化吸収が早いデンプン食(パンや麺類などの、いわゆる「粉食」)、油(特に飽和脂肪酸は良くない)、魚類以外の動物性タンパク質などがある。水分は、体が要求する量とタイミングにしっかりとるが、飲みなれていない飲料は避ける。できるだけ、酸っぱい飲み物が良い。体をアルカリ性に誘導するからである。夏場は、400g入りのプレーンヨーグルトを毎食時に食べている。

睡眠と休息。夜は少なくても6時間は眠り、可能な限り20~30分の昼寝もとる。就寝時にクーラーはもちろん、扇風機も使わない。窓を開け自然の風を取り入れて眠る。体の内部に蓄積した熱を逃がすために、後頭部と額、両手と両足を保冷剤(いわゆる「アイスノン」)で冷やす。仕事柄、手足を酷使するので、手の炎症や足のだるさを鎮める効果もある。そして、昼の休息は十分とる。

仕事の仕方。できるだけ屋外での作業は早朝と夕方の涼しい時に行なう。ここで大事なことは、暑い時間帯に行なう屋内での作業をしっかり用意しておくことである。休憩はこまめにとり、脱水とミネラル不足を防ぐため経口補水液を十分飲む。

体温調整と服装。基本的に体温調整は発汗と服装で調整する。シャツとズボンは白色系で通気性の良いもの。もちろん、シャツは長袖である。靴は白い木綿の地下足袋。熱くなりにくく蒸れない。それでも足が熱くなり過ぎたら、地下足袋を冷たい水で濡らすと、気化熱でかなり冷える。

誰でも猛暑はつらい。体にこたえる。体調管理をしっかりしているのだが、還暦を過ぎた頃から、早朝に目覚めてもなかなか起床できなくなった。そんな時は、朝食をとった後、少し二度寝している。あくまでも、体調に正直でないと、猛暑はとても越せない。

(文責:鴇田 三芳)