第4話 光の春

百姓雑話

畑の雪昨日が大寒であった。関東地方では、この頃から2月中旬頃までがもっとも気温の低い時期だ。特にこの冬は近年になく寒い。ひと冬分の寒さをもう体感した気がする。温暖化に慣れたためか、作物の寒さ対策がつい後手に回ってしまった。

しかし気温は低くても、農場にはもう春が来ている。光の春だ。11月下旬から冬至の頃までの弱々しい日差しに比べれば、夕暮れが遅くなり、光もだいぶ力強くなった。帽子をかぶらないと眩しい。野菜では、結球していた白菜が光を感じて葉を開き始めている。菜の花もちらほら咲き、春ブロッコリーの花蕾(食べる花の部分)も見えてきた。植物は季節を敏感に感じとる。

先週水曜日には、レタス、サニーレタス、水菜、セロリをまいた。明日はキャベツ、白菜、ブロッコリーなどをまく。この時期から5月中旬にトマトを植えつけるまで、種まきと植えつけが目白押しだ。冬至の頃からの1カ月間は、体をいたわり、ゆっくり働いていたが、これからは徐々に力を入れる。作業開始時刻も、7時半、7時、6時半と、日の出の時刻に合わせて早め、5月からは6時に始める。

光の春が来たとはいえ、それでもまだまだ寒い。作業場でも朝は零度を下回る。触れるもの全てが冷たい。手が切れそうに痛くなり、かじかんで指の動きが鈍る。そんな時は育苗ハウスに行って熱いお茶を飲む。体と心がほんのり温まる。厳寒の中で知る、小さな幸せだ。

(文責:鴇田 三芳)