第226話 根絶の思想、共存の摂理(3)

百姓雑話

サラリーマンの妻の趣味はガーデニングで、写真のように今、自宅の狭い庭も花盛りです。その中に、苺が白い小さな花をたくさん咲かせています。私が3年前に2株植えたものが、ランナーを四方八方に伸ばし、今では数十株にもなり、他の花々と美しさを競っているようです。去年は、初めて実を着け、虫たちと分けあったものの、20粒ほど食べられました。特に肥料を入れていない庭なので、1株に5、6粒くらいしか着きませんが、完熟のとっても甘い苺を食べると、ささやかな幸福を感じます。

ここで、一つの実験をしてみました。写真内の左下にあるプランターに苺の苗を植え替え土には肥料を入れました。草もきれいに除いてあるので、苺の苗が肥料も水も光も独占しています。

すると、やはり予想どおりの結果が出ました。たくさんの草花が所せましとひしめき合い肥料と水と光を分けあっている所の苺にはアブラ虫がいっさい付いていませんが、すぐ横に置いてあったプランターの苺の苗にはアブラ虫がびっしり。

畑では適度な雨量と暖かさで、各種の野菜がすくすく育っています。下の写真は、3月中旬から芽を出した韮の様子です。この韮は、昨年6月に植えた苗が9月に「アカサビ病」で地上部が全滅したものです。研修生は「もうだめか」とがっかりしていました。

 しかし、アカサビ菌は、葉をすべて枯らしたものの、根までは枯らせませんでした。あるいは、アカサビ菌は、もし韮を根絶してしまえば、自らの生きる糧を失くしてしまうので、根までは枯らさなかったのかもしれません。

最後は、セイタカアワダチソウの話です。アメリカから渡ってきた、この草は非常に生命力があります。タンポポのように種を風で飛ばすだけでなく地下茎を周囲に伸ばし、みるみる他の野草を圧倒してきました。さらに、根から他の植物の根を枯らす物質を分泌し、まさに他の植物を根絶してきました。ところが、そのセイタカアワダチソウが近年少しずつ減ってきたように見受けます。

かつて、植物生態学者の沼田真先生(千葉大学長・故人)は「いずれセイタカアワダチソウは自らの根が出す毒によって自滅していくだろう」とおっしゃっていました。今から30数年ほど前の授業での話でした。

(文責:鴇田 三芳)