第25話 豆の季節

百姓雑話

 

農場では今、豆の季節である。5月中旬の絹さやえんどうから始まり、スナップえんどう、空豆、グリーンピース、いんげん、モロッコいんげん、枝豆と続く。先週はすべて出揃ったが、今週からはいんげんと枝豆だけになり、これらを10月まで出荷する。

ところで、豆類の食べ方はいろいろある。絹さや、スナップ、いんげんなどは未熟の内に収穫し野菜として食べ、大豆や小豆は完全に熟した豆を穀類として食べる。その中間が枝豆と空豆である。日本人にとって豆類はとても身近な食物で、特に大豆はなくてはならない食材である。世界的にも大豆は重要な穀物で、油の原料となったり、植物性たんぱく質の供給源にもなっている。

また豆類は、食材として不可欠なだけでなく、窒素固定という生理機能があり土を肥やしてくれる。この窒素固定は、豆類の植物のほとんどに見られ、その根に共生するバクテリアが空気中の窒素を植物が利用できるような状態にすることである。上の写真は、大豆の根に付いた様子で、直径5、6ミリの瘤がそれである。大豆は、この機能と栄養に優れ、乾燥地でも栽培できることもあって、世界的な穀類の一つになっている。

これらの理由と、もともと豆類が好きということもあり、私は実によく豆類を食べる。豆の季節は、夕飯の主食が豆類であることも多い。整腸のために納豆も毎日1回食べる。

思い起こせば、専業農家に生まれた私は、小さい頃から豆類とは切っても切れない縁があった。冬の寒い日、一家総出で味噌や醤油も作った。おやつには甘い煮豆をよく食べた。納豆も常食していた。動物性たんぱく質の不足を豆類で補うように母親が気配りしたのだろう。

その母親は嫁いだ大家族のために一生働きづめであった。農作業を一人前にこなしながら、他界した姑が残した8人の子らと自らの子5人の母親も務めた。そんな母が一息つくのは夜なべの針仕事の時だった。遅くまでテレビを見ている私に「マメに働くんだよ」、「男だって料理していいんだからね」と諭すように言っていた言葉を今も鮮明に憶えている。その当時は聞き流していたが、気がつけば、その通りの人生を送っていた。

(文責:鴇田  三芳)