第27話 温暖化がもたらす災い

百姓雑話

温暖化が指摘されはじめて久しい。その一方で、太陽活動の関係で地球は寒冷化に向かうという説もあるが、今までの気象データからは急速に温暖化が進んでいるようだ。私も、長く営農してきた経験から、当面は温暖化が続くと実感している。有機栽培は病気や害虫との戦いなどと言う人がいるが、私は温暖化による自然災害を防ぐ方が難しいと思っている。

もし今までのように温暖化が進めば、その影響は多岐にわたるであろう。海面の上昇で沿岸部の都市や国土の大半が水没する可能性も取りざたされている。そのような生存にかかわる問題だけでなく、私たちの生活の隅々まで影響されることは想像に難くない。

食料問題もさらに深刻になるかもしれない。今まで寒くて栽培できなかった農産物が作れるようになる一方で、砂漠化や高温障害で栽培できなくなる地域も相当な勢いで増えると予想されるからだ。日本の農業現場でも影響が出始めている。晩秋から冬にかけて暖かくなり、冬場の農作物が作りやすくなった反面、主食の米が西日本で作りにくくなりつつあるという。

また気象の面では、季節外れの突風や竜巻、大雨による洪水などの自然災害が増えるであろう。台風は、数は減ったものの、明らかに強大化してきた。高緯度で発生することも珍しくはなくなり、衰えることなく上陸するようになった。時には日本上陸の直前でさえも発達することがある。日本近海の海水温が1980年代中ごろを底に徐々に上がっているためであろう。直近では、先月18日から19日にかけて台風4号の暴風が吹き荒れ、私どもの農場でも予想以上の被害がでてしまった。20年以上営農してきたが、6月に台風被害があったのは15年ほど前の1回だけである。これからまさに夏野菜の収穫が始まるという矢先の被害で、去年9月の台風被害よりも甚大である。収穫が始まったばかりのインゲンの葉はボロボロになり、上に写真のように今月上旬から収穫し始めるはずだった露地トマトやミニトマト、ピーマンなどの果菜類の被害は特に深刻である。多分、今年は台風の上陸が多い年になるであろう。今からでも、次の襲来にそなえて、強風対策をしなくては。

農業は自然の恩恵の上に成り立っている。しかし時には、自然の脅威が心の隙を突いてくる。そんな時、人間の非力さを痛感させられる。どうあがいても、自然の力には勝てない。

(文責:鴇田  三芳)