第94話 害虫対策(4)

百姓雑話

畑の虫取り器

前回の続きである。

四番目のタバコ蛾はピーマンやトマトなどに寄生する。防虫ネットで野菜をおおえば、被害は出にくいが、それが困難な場合は発見した時に手で一匹一匹つぶすしかない。なかなか厄介である。

五番目のアブラ虫の対策は、第66話と第75話でも述べたように、アブラ虫が好む草を農地とその周辺に生やさないように草対策をきちんと行ない、天敵と防虫ネットを活用すれば、ほぼ完璧に抑えられる。天敵としては、テントウ虫、カゲロウ、蜂が有効である。特に強力な天敵はコレマンアブラ蜂である。これは商品化されていて、最小単位が7000円程度で購入できる。それでも解決しない時は、洗剤の希釈液を使うと、手間はかかるが、アブラ虫の被害は問題にならない。

六番目のハスモンヨトウ虫は、かつては非常に厄介な害虫であった。研修生たちとその幼虫を一気に何千匹も手でつぶしたことが何度もあった。ある若い研修生は「やりたくない。」と作業を放棄したこともある。幼虫のうちに補殺できず土の中で蛹(さなぎ)になってしまったものは、手や熊手で土を薄く削って補殺することも常であった。それでも土の中に残ってしまった時は、嗅覚の鋭い愛犬に蛹を探してもらい、徹底的に補殺したこともある。

それが今や、フェロモン・トラップを導入したため、まったく問題にならない。雌の出すフェロモンと同じ効果のあるゴムを産卵時期に畑の中に吊るしておくだけである。その臭いに誘われて雄がウヨウヨ集まり罠に落ちるため、雌が交尾できないのである。設置1年目はトラップ容器がほとんど一杯になった。たぶん千匹くらいは捕れたであろう。そのゴム製の臭いの素は1つ1000円で買える。かつての苦労を知る身としては、1000円は桁違いの安さである。

トラップを設置してから3年目の今年は、写真のようにハスモンヨトウ虫の飛来がかなり減った。トラップと天敵の活躍によって、ハスモンヨトウ虫による被害はほとんど問題にならなくなった。天敵の中では、アマガエルがもっとも有効なようである。彼らが農場で増えるよう、私は春から初夏にかけ農場の片隅に水溜りを作っておく。

最後に余談だが、農薬を使わなくても農業で喰っていけると私が確信したのは、アブラ虫をほぼ完璧に抑える方法にたどり着き、ハスモンヨトウ虫を見事に捕獲するフェロモン・トラップに出逢ったからである。

(文責:鴇田 三芳)