第193話 4つの資源(2)

百姓雑話
凍てつく厳寒の中、タンポポの花が咲いていました。

このところ、中国の経済に急ブレーキがかかり始めた。そのため、石油をはじめとする、鉱物資源の価格が下落し続けている。今後、数年前のように石油が再び値上がりするかと言えば、それは多分ありえない。なぜなら、急拡大してきた中国経済は、あまりにも投資に依存し過ぎてきたことに加え、人口減少と極端な貧富の格差を容認する政治体制によって、経済拡大は頭打ちになり、遠からず日本のようになることは間違いない。

かと言って、中国に代わって世界経済を力強く牽引する国を探したところで、どうも見当たらない。辛うじてインドに期待が持てるものの、いずれ中国と同じ道を歩むのは歴史の必然であろう。他のアジア諸国や中南米、アフリカの国々は、技術や教育のレベル、社会体制や自然環境などの総合的な国力において先進国に大きく水をあけられており、第三次世界大戦でも起きない限り、先進国にキャッチ・アップするのはほぼ不可能である。

このように将来を予測すれば、日本が鉱物資源の調達に四苦八苦する可能性は極めて低い。そして何より、人類は資源浪費型の生き方を転換していかなければならない。

さて、私たち日本人の未来はどうだろうか。冷静に足元を探ると、奈落の底に落ちそうな二つの落とし穴に気づく。それらは、国債の暴落と東南海での巨大地震である。増え続ける国債は、ロシアン・ルーレットのように、遅かれ早かれ必ず暴発する。今世紀になってから、その引き金はすでに何度か引かれている。そして今後も、世界のあちこちで引かれそうである。ひとたび国債の金利が上がり始めたら、円は一気に売られ、政府や日銀がいくら介入しても「大幅な円安とハイパー・インフレ」という奈落の底に落ちていく。まさに、敗戦直後の再来である。あの時は国土再建と朝鮮特需に救われたが、今後は救いの手が伸びて来そうもない。

ハイパー・インフレはすべての物価に及ぶ。例外品は米くらいであろう。もちろん、輸入品の価格は暴騰する。とりわけ、石油とかガスの暴騰は電気代に跳ね返り、すべての生産活動と日々の生活を直撃する。純国産食料と思われがちな卵なども、飼料を輸入トウモロコシに大きく依存しているため、必然的に上がる。消費者物価の値上がり幅は、消費税が5%から8%に上がった時の比ではない。桁違いのインフレが起きる。

いたるところに食うや食わずの庶民が溢れ、飢餓が当たり前になる。餓死者の数が連日報道されることはあっても、交通事故死と同様に個人名はほとんど報道されなくなるだろう。そうなってから食料増産を叫んだところで、すでに手遅れである。

結局、戦前と同じ道を歩み出すだろう。いや、すでに歩み始めている。世界的な大恐慌の後に歩んできた道を。あの時は、「アメリカだ、ハワイだ、ブラジルだ」と移民政策を推進し、日本では喰っていけない農民たちを半ば棄民のように送り出した。それでも移民先が足りず、何のかんのと理屈をつけて、軍事力を背景に台湾、朝鮮、満州へと農民などを送り込んだ。その後の顛末は周知のとおりである。

普通の人は、省エネや不便さにはかなり耐えられようが、日々の食事を3回から1回に減らすのは到底耐えられない。まして、飢餓状況が広範かつ長期に蔓延すれば、社会から理性が失われ、狂気が常識になってしまうだろう。

一刻も早く、食料自給率を向上し、食料資源の安定的な確保に国力を注ぎ込まなければならない。

(文責:鴇田 三芳)