第29話 「つるぼけ」と少子化と太平洋戦争(1)

百姓雑話
これはテストえです

これらには、根源的な類似性があると私は思っている。今回は「つるぼけ」と少子化について述べてみたい。

農場では今、さつま芋の蔓が四方八方にのび、すでに地面を覆い隠している。この時期にこれほど繁茂しているのは肥料と水が十分に効いている証拠である。この状態を見て、「今年は豊作だ」などと手放しで喜んではいけない。さつま芋は、窒素肥料が効き過ぎると「つるぼけ」という現象が起き、葉ばかり茂り肝心の芋がならないことがある。窒素はたんぱく質の材料になる重要な元素である。人間の場合は、無機状態の窒素からたんぱく質を合成できないので、動物や植物のたんぱく質を摂取している。

ところで、植物も人間も大別すると、栄養成長と生殖生長という2段階の成長過程がある。簡単に言えば、栄養成長とは体が大きくなる過程で、生殖生長は子孫を残す過程である。人間の女性であれば、身長の伸びが止まり生理が始まる頃、十代の中頃が栄養成長から生殖成長期に移っていく時期である。この時期までは体が大きくなるためにたんぱく質をたくさん必要とする。植物ならば窒素を積極的に欲しがる。

さて、ここからが私の推察である。人間が生殖成長の過程になっても積極的にたんぱく質をたくさん摂取したら、一体どうなるか。さつま芋の場合であれば、必要以上の窒素肥料がいつまでも土に有ることに相当する。さつま芋が「つるぼけ」して芋を付けないように、人間も不妊化するのではないか、というのが私の推察である。

この推察にいたる事実をいくつか挙げよう。難民に配給される食料は極端にたんぱく質が少ない。その難民たちは子だくさんである。戦争状態が続くイスラエルとパレスチナ。経済的に貧しいパレスチナ住民の方が、多分、たんぱく質の摂取が少ないであろう。やはり子だくさんである。お米中心の時代は、日本人も子だくさんであった。洋食化し高たんぱく質の食事になったら、不妊が増えた。そして百獣の王ライオン。サバンナ地帯で食物連鎖の頂点に君臨しているライオンはなかなか妊娠しない。発情した雌はボスのライオンと何度も交尾しないといけない。そのライオンは完璧な肉食動物である。

世間では、少子化を問題視し、その原因は経済や社会の中にあるかのように言われている。私は、それも否定しないが、たんぱく質の摂り過ぎも少なからず影響していると思っている。

かつて人類は肉食動物に狩られるひ弱な生き物であったと言われている。それが今や、食物連鎖の頂点に登りつめ、肉をむさぼり喰う存在になった。少子化は、その当然の結果である、と思えてならない。

(文責:鴇田  三芳)