第36話 男は女の付属物?(1)

百姓雑話
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カボチャは、ウリ科の作物なので、一つの株に雌花と雄花が咲く。丈夫な苗を畑に植え生育環境が良ければ、雌花と雄花がほぼ同時期に咲き始める。

ところで、今から20年ほど前、陽ざしが強くなったゴールデン・ウィーク、不思議な現象に気づいた。苗に十分な水をあげないまま、うっかり夕方まで忘れてしまった時のことである。苗は皆しおれ、特に植え残った2本のカボチャの苗は今にも枯れそうになっていた。たかだか2本の苗のために往復1時間もかけて自宅に水を取りに行くのが面倒で、苗をそのまま放置し帰宅してしまった。翌朝、ポリ・タンクに入れた水を持って育苗ハウスに行くと、何とカボチャの苗はぴんと葉を広げ雄花を咲かせているではないか。その感動的な光景は今でも目に焼きついている。回復しないと判断した横着を反省し、すぐに水をあげた。それから数日後、畑に植えたが、雄花ばかり咲き肝心の雌花がなかなか咲き始めなかった。たぶんカボチャの苗は、生育環境が悪かったために体力が衰え、実をつけ種を残すまでの期間がないと判断し、手っ取り早く遺伝情報をつなげようと雄花ばかり咲かせたのだろう。

そもそも生物の進化の過程をたどると、雄という器官あるいは生物が生まれるのは後のことであったらしい。ウィルスのように原始的な生物は頻繁に突然変異を起こす。それによって遺伝情報を多様化しているので、雄など不要である。しかし生物は、進化とともに、遺伝情報を正確に残すために突然変異を防ぐ仕組みを作ったが、その一方で遺伝情報を多様化する方法を生み出す必要に迫られた。そこで雄という存在が出現したのだろうと、私は勝手に解釈している。

30年ほど前、会社員を辞め1年間、ある大学の生物学科に入学した。発生学の授業で、「母の胎内にいる時、男のシンボル・睾丸は卵巣が変化しながら下に降りてきたもの」という教授の話は実に衝撃的だった。「歴史は夜作られる」と言われるし、「若い特攻隊員がアメリカの艦船に突っ込む時、父ではなく、母の名を叫んだ」という後日談などを教授の話に重ね合わせ、「しょせん男は女の付属物なんだなー。」と30歳にして自覚した。今から思えば、どうも私の人生はその頃から曲がり始めたような気がする。

(文責:鴇田  三芳)