第199話 根と実

百姓雑話

私の大好きな柿が今年は不作である。あのトロッと熟した柿は、おいしいだけでなく、ビタミンCやカロテンも豊富である。「柿が赤くなれば、医者は青くなる」という諺があるほど、柿は健康に良い。

ところで、果樹には「隔年結果」という現象がよく現われる。特に柿と蜜柑(みかん)に起きやすい。今年たくさんの実をつけると、夏から秋にかけて根などに蓄える栄養分が少なくなり、来年はほとんど実がつかない。つまり、実を成るままにしておくと、一年おきにしか果実を結ばないという現象である。

この柿などの果樹だけでなく、一般的に、植物は根と地上部とのバランスがとても重要である。

今年は、晩夏から初秋にかけて猛暑から一気に多雨と日照不足になったため、露地栽培の胡瓜(キュウリ)が一気に枯れてしまった。原因は根と地上部とのアンバランスにある。根は昼夜分かたず気温にあまり左右されず常に水と栄養分を吸収し地上部に送る。しかし、地上部は低温と日照不足のためにこれらをあまり必要としないので、葉に余分の水と栄養分が溜まり、それが葉を腐らせてしまったのである。人間で言えば、長時間お風呂に入っていると、皮膚が白く変質するようなものである。

トマトではこんなことがある。トマトは、土の中に肥料が十分にあると、葉の付け根から次々に脇芽を出し、うっそうと茂る。そこで、一般的なトマト栽培では、これらの脇芽を除いてしまう。主な理由は、実をおいしくするため、作業性を良くするため、過繁茂による湿度過多を防ぐため、開花から収穫までの期間を短くするためである。しかし、脇芽を次々に取り除いていくと、地上部が少なくなり根が吸収した栄養分や水が十分に利用されなくなる。そのため、過剰となった栄養分や水が葉や茎、実などの地上部に過剰に蓄積し、病気が発生する。人間で言えば、食べ過ぎと運動不足で肥満になり、その揚げ句に病気を患うようなものである。

最後に茄子の例を挙げる。茄子も、トマトと同じように、肥料が十分に効いていると葉の付け根から次々に枝がでる。そして、その枝を放置すると一気にたくさんの実が取れるものの、肥料が少なくなると木が疲れ、実があまり成らなくなる。もし晩秋まで収穫しようと思えば、何回か追肥し根の力に応じて枝の数を減らさなければならない。茄子は、トマトほど根が強くなく実が積極的に水分を吸収するので、枝を減らしても病気はまず発生しない。

私たちは植物を見る時、その地上部、特に花や実に目を奪われがちである。しかし、根も大事な組織で、根と実などの地上部とのバランスが非常に重要である。そして、病気が発生する原因の一つが、これらのアンバランスである。植物も人も何ら変わらない。

最後に、「相田みつを」の詩を挙げたい。「土の中の水道管 高いビルの下の下水 大事なものは表に出ない」。

(文責:鴇田 三芳)