彼岸を過ぎ、長引いた残暑もやっと終わりつつある。この頃になると、夏草との闘いがほぼ終わり、「今年もどうにか乗り切れそうだ」と安堵する。
ところで、昔から農民は、草を忌み嫌い、「草にするのは1年、草取りは10年」とよく言った。「ひとたび草の種を落としてしまうと、その後長い間つらい草取りをしなければならなくなる。だから、草取りをまめにやりなさい」という意味である。これはトラクターなどの機械が普及する前のことであるが、今でも相変わらず草は厄介である。
ここで、農業をするうえで草がなぜ困るのか、あらためて整理する。第一に、肥料を草に奪われること。しかし、人糞まで利用していた時代と違い、現代では手軽に肥料が入手できるので、これは大きな問題にならない。次に、草が茂って作物に当たる光が減ってしまうこと。同様に草が茂ることで作物の周囲が過湿になり、作物が腐ったり病気になったりすること。四番目には、草が病気や害虫に汚染され、それらが作物にも感染すること。そして、最後が見た目。とりたてて作物に悪影響はなくても、きれいに見えないので、草を嫌う。
では、どんな草が厄介か。
ひとくちに草と言っても、多種多様である。まず生育する季節によって大別すると、夏草と冬草とがある。一般的に、夏草は生育旺盛である。何も対処しない場合うっそうと茂り、ほとんどの野菜を駆逐してしまう。梅雨の時期は、野菜の間に草が茂り非常に過湿状態となるため、上述のように野菜が腐るか病気になる。梅雨が明けると、ほとんどの夏草は一気に種をつけ、先人の言うとおりになってしまう。
次に冬草だが、春までは茂らないので野菜を駆逐することはまずない。そのためか、夏草ほど神経質にならない農家がほとんどである。しかし私は、直売の関係で露地野菜を通年栽培しており、冬草の対策にも注力している。特にハコベ、ホトケノザ、ナズナは適時適切に除去し、その種は落とさないように気をつけている。理由は、ハコベとホトケノザはほうれん草や小松菜に絡みつき収穫や荷造り作業に支障が出るためである。また、ホトケノザとナズナは害虫のアブラ虫と病気のウドンコ病を越冬させるので、これらを除去しないと、翌春に被害が出てしまう。余談だが、研修生が独立のために畑を探すとき、夏ではなく、できるだけ冬が良いと助言している。
最後に、草を個別に見ていく。まず、クズ、ススキ、セイタカアワダチ草、竹の生えている土地は、農業を営むのであれば、畑として使わないほうが良い。とりわけ非農家出身の新規就農者は避けるべきである。よほど資金力がない限り、志半ばで挫折する。また、スギナとイネ科の草も相当厄介である。特にメヒシバというイネ科の草は、繁殖力が旺盛で、要注意である。
(文責:鴇田 三芳)