第385話 日本人の食の転換点

百姓雑話

やっと酷暑がおさまった。8月も9月も観測史上もっとも暑かったらしい。当地では、酷暑にくわえ異常な雨不足で、秋野菜が不作ぎみだ。それでも、米や夏野菜などは豊作で、全体的には「良くもなく悪くもなく」というところだろう。

ところで、世間一般の食料品の値上がりが続いている。従来から日本は食料品の原材料の多くを輸入に頼ってきたが、穀物やエネルギー資源などの貿易価格の高騰と円安によって、そのツケを払う羽目になった。国際情勢の推移を展望すれば、穀物やエネルギー資源などの重要物資が値下がりする傾向になく、また日本の国力の低下によって円安が大きく反転する可能性はきわめて小さいので、食料価格の値上がりは今後も続くと予想される。

この期に及んで慌てふためいても、もう手遅れだ。

未来から振り返ったとき、「あの時代が日本人の食の転換点だった」と評されるだろう。もっと大局的に観れば、「日本の歴史の転換点」になるかもしれない。

人類の歴史は生命の危機によって動いてきた。生命の危機の中でも、とりわけ食の危機は強く歴史を突き動かす。現代の世界はその渦中の真っただ中にあり、日本人の危機は深まるばかりだ。

100歳になっても健在なヘンリー・キッシンジャー氏(元アメリカ国務長官)は、かつて数々の名言を残したという。その中に、「食をコントロールする者が人民を支配する」というものがある。けだし名言である。

(文責:鴇田 三芳)