一般に農家は、手で草を取るとともに、除草剤、トラクターなどの機械類、ポリマルチなどを駆使して、どうにか草に負けないように努力してきた。しかし、農民の高齢化と離農者が後を絶たず、草に手こずる農家が多くなってきたように見受ける。実際、耕作放棄地がいたる所にあり、増える一方である。そのため、営農している農家は迷惑をこうむり、県や市の行政機関は頭を痛めているのが現状である。この問題は、営農していない農家の農地所有権に制限を加えるくらいの、思い切った改革がなされなければ、たぶん深刻になる一方であろう。
ところで、私たちの農園では、除草剤以外の対策を多様に組み合わせ、研修生と週末ボランティアの努力にも支えられ、どうにか作付け面積を確保している。その一方で、草に覆われてしまった場所が何カ所かあり、たぶん近所の皆さんの目には、「あちこち草を生やしているが、あれでやっていけるのかな」と映っているかもしれない。確かに、今年は手こずっている。
しかし、あえて草を生やしている所もある。例えば、他の農家の迷惑にならない範囲で、畑の周囲は一年中草を生やしておきたい。そうすることで、害虫を食べる生き物(天敵)も住みつき、野菜の害虫被害を減らせる。生態系の捕食の連鎖ができあがるためである。また、草が茂っていると、強風を弱めてくれもする。ただし、アブラナ科の草や野菜を畑の周辺に生やすのは危険である。厄介な害虫が増えることがあるためである。
他にも、草の効用はある。「草も活かす」(第33話)で述べたように、草を刈って地表に敷くと、土の乾燥を抑えるとともに、土の中の微生物を豊かにしてくれる。また、草を土にすき込むと、土を豊かにしてくれるだけでなく、草の種類によっては土の中のセンチュウという害虫を減らせる。ただし、この方法にはいくつかのマイナス面もある。まず当然ながら、それなりの馬力のあるトラクターが必要である。第二に、地中の草が分解するまで何度か耕すため、その間は何も作付けられない。さらにトラクターで何度も耕すと、耕盤という土の堅い層ができ排水性が悪くなるため作物を栽培しにくくなる。第四番目は、土の中にすき込んだ草にコガネムシが産卵し、その幼虫が作物を加害することになる。ざっと挙げただけでも、これくらいの弊害があるので、草を畑にすき込むのは十分気をつけるべきである。
いずれにしても、有機農業を行なう者は、草を単純に敵視せず、草も時には味方にする知恵が必要である。余談だが、草の多い畑を借りた時、私は「ラッキー」と思うことがある。先の効用に加え、草をいくら生やしても、それを理由に地主から返却を迫られることはまずないから、気が楽なのである。
(文責:鴇田 三芳)