あえて言えば、人には3回、誕生日がある。成長するうえでの節目である。そして野菜にも、実を着けるまでに3回の誕生日、3回の節目がある。
植物は、発芽条件が満たされると、種に蓄えられていた栄養を使って芽を出す。ほとんどの野菜はまず子葉を拡げる。左上の写真のような状態である。この頃はまだ根が十分に働いていないので、おもに種の栄養で成長していく。いわば、誕生直後の赤子のような状況である。
次に、本葉を開き始め、自分の根で水や栄養分を吸収しすくすく育っていく。この頃が幼児期から小学生くらいの時期に相当する。自分の根で養分を積極的に吸収するので、肥料の要求量が増えていく。そこで、トマトやキュウリなどの実を収穫する野菜は、左中のように鉢上げされる。また、丈夫に育つには光がたっぷり当たる必要があり、株間を拡げる。すると苗は、穏やかな環境の中で、急速に成長する。
そして、左下ように、一定の大きさに育ち、花が付き始めるころに畑に植えられる。この時期が3回目の節目、誕生である。厳しい自然環境に順応し、病気や害虫などから身を守り、たくましく成長していく。そして、大地しっかり根を張り、自然の恵みを受けながら、必死に子孫を残していく。人間で言えば、子どもが産めるまでに成長し、社会に旅立つ頃にあたる。
こんな植物たちの命の営みを見ていると、自然農法を実践してこられた故・福岡正信氏の農園を30年ほど前に訪ねた時、「君、わかるかね? 植物が神なんだよ」と言われた理由がわかるような気もする。
(文責:鴇田 三芳)