日々必要となる食料品から耐久消費財にいたるまで、物の生産から消費にいたるシステムが激変の真っただ中にある。そして、アマゾンがその先頭を走っている。「流通革命」と言えそうな激変である。個人使用の車もいずれは、ディーラーのショウルームで購入する従来の方法に加え、個人のパソコンやスマホの画面からポンポンと購入またはレンタルする方法が普通になるだろう。人手不足に苦労している日本でも、人口減少にともなう消費量の減少と労働の機械化がどんどん進み、労働市場全体としては10年もたたないうちに人手が余るようになるかも知れない。
農業分野も例外ではない。激変の真っただ中にある。半世紀近くも続けられてきた減反政策が平成30年度に廃止される。日本一のロビー団体として君臨してきた農協(現JA)は存在価値と組織力を政府によって大幅に縮小されつつある。生産現場では、前話で書いたように、ついに農民の高齢化が行き着くとことまで行き着き、今冬も生鮮野菜の高騰が続いている。これらは、一過性の出来事ではなく、構造的な要因によってもたらされた必然的な結果である。
このような激変に対し私たち農民や消費者はどう適応したらいいのだろうか。この適応を誤ると、その先には大きな不幸が待っているに違いない。
かつて日本の農民は極貧という大問題を抱えた。貧困にあえぐ農民を他産業が吸収しきれず、日本政府はハワイ、アメリカ本土、ブラジルなどに多くの農民を国策として移民させた。そして遂に、合法的な移民が行き詰まると、満州を植民地化し、多くの農民を入植させた。入植と言っても、その実は「棄民」であった。結局、その結果行き着いたのは荒涼たる廃墟と2都市の被爆だった。
こんな悲惨な歴史をくり返さないためにも、農民も消費者もここは時代の激変をしっかり認識し、冷静に行動しなければならない。「食糧とエネルギーに関しては、他国への依存をこれ以上増やしてはならない」と私は思っている。「輸入できるのだから、構わないじゃないか」と高をくくっていると、悲惨な歴史を繰り返しかねない。
歴史から私たちが学んだことは、何かあればエネルギー資源と食料は戦略的物資へと豹変することである。現に最近も、北朝鮮への制裁として、石油の供給を制限する制裁を安保理は採択した。
(文責:鴇田 三芳)