組織も生き物である。生まれ、成長し、成熟し、いずれは消滅する。それが宿命である。そんな組織を、できるだけ生き生きと保ち、その構成員や社会にとって有意義な存在であり続けさせるには、どんな形態でどう運営したら良いのだろうか。
人が2人以上集まれば、組織が生まれる。そこには必ず価値観などの考え方の違いがあり、意見の相違が生まれる。しかし日本では、教育の結果なのか、あるいは阿吽の呼吸という文化が現代でもあるためか、小さな組織でもなかなか自分の意見を率直に言わない人が多い。そのため、オープンな意思疎通がとりにくく、それを補完するかのように「根回し」が頻繁に行なわれる。根回しはどんな社会でも行なわれていて、国際会議などでも普通に行なわれているので、たぶん、意見が異なる者同士が折り合いをつけるための人類の知恵なのかもしれない。
その一方で根回しは、皆で腹を割って話し合う関係をくずし、オープンでダイナミックな意思疎通を阻害しやすい。横行すると、創造性の芽を摘み、変革を拒むようになる。その結果、導かれる決定や行動が常識の範囲内に納まりがちになる。組織の構成員が多くなればなるほど、根回しの弊害が根深く厄介になる。
さらに、中核を担う人の数も重要である。一般的に、構成員の数が増えるにつれ、組織が細分化され、中核の人が増えていく。当然のことながら、情報の共有や社会状況の認識から合意形成や行動にいたるまで、多大な労力と費用が必要になり、組織の成長は停滞し始める。部門間にセクト主義がはびこり、各種の環境変化に迅速に適応できなくなる。時には中核となる人の私利私欲のために重要な決定が歪められることもある。
これらが、組織の老化の始まりである。
しかし残念ながら、ほとんどの構成員は組織の老化に気がつかない。なぜなら、組織の成熟に構成員が酔いしれるからである。その足元では着実に、「寄らば大樹」の構成員たちが組織の老化を加速させていく。天下にその名を轟かせてきたPanasonicなどもこの類なのかもしれない。故・松下幸之助氏の設立以来、卓越した経営者たちのもとで発展してきたPanasonicをしてそうであるから、老化防止策を意識的に実行していないと、気づいた時は手遅れになりかねない。デフレ経済という右肩下がりの経済状況下であれば、なおさらでる。
組織を若く生き生きと保ち、その構成員や社会にとって有意義な存在であり続けさせるのは、実に至難の業である。
(文責:鴇田 三芳)