今年は、夏から秋にかけ異常気象に何度も翻弄され、私たち皆生農園も苦労した。その影響で、秋から冬にかけて暴落しやすい野菜が今年は高どまりしている。被害をうけた農家はもちろん、消費者も大変である。ちなみに、生鮮野菜は2割品薄になると、末端価格は2倍になる。逆に2割だぶつくと、半値になる。工業製品とは異なり、需給関係のわずかなインバランスで、野菜の価格は激しく乱高下する。
それでは、夏以降に発生した3つの異常気象とその影響をふりかってみたい。まずは長期の猛暑があげられる。今年の猛暑日は記録的な多さで、10月になっても西日本では猛暑日を記録した所があった。例外にもれず、私どももかなりの影響をうけた。猛暑と水不足のために、胡瓜は収穫量が減り、いんげんと里芋は壊滅状態になってしまった。その一方で、猛暑の好きなオクラは豊作になり、トマトやミニトマトも十分とれた。私どもでは結果的に、多種類を栽培している関係で、猛暑の悪影響は軽微で済んだ。
次に、10月も異常であった。雨の日が多く日照不足が続いた。例年であれば、10月中旬から天気が周期的に変わり秋晴れの日が多くなるのだが、今年はとにかく雨の日が多かった。11月の中旬からやっと秋晴れの日が続くような始末である。千葉県内では、台風や秋の長雨による記録的な雨量のため、畑が水びたしになり大根が腐ってしまった地域もある。私どもでは、種蒔きや定植が計画どおりにできず、一時期キャベツと大根が欠品状態になってしまった。くわえて日照不足のために野菜の生育が遅れ、例年であれば11月上旬にとれるブロッコリーが、今年は12月にずれこんでしまった。
3つ目の異常は、寒波の到来が早かったことである。それも暖かかったところに急に寒波が訪れた関係で、野菜が寒さに慣れる間がなく、今まで体験したことのない被害がでた。秋が短く、夏からいっきに冬が来てしまったような気がする。当地では、11月11日に初霜がおり、13日には初氷がはった。そのため、例年であれば12月上旬までとれる露地ピーマンが早々と全滅し春菊とブロッコリーも霜害にあった。人もそうだが、急激な気温低下は植物にとっても過酷である。露地栽培では、ハウス栽培と違い、異常気象の悪影響を受けやすく、経営が安定しない。だから、農家は次々にハウス栽培に移行してきた。
異常気象の悪影響をもっとも大きくうけるのは、大根とかキャベツとか、限られた種類のみを栽培している地域や農家である。作物の種類が少ないためにリスクが分散されないからである。また、栽培規模が大きい地域や農家も同様である。規模が多きすぎるために異常気象への対策がとりにくいからである。余談だが、この現象は農業分野に限らない。例えば、リーマン・ショックの影響で家電製品を主力としていたPanasonicやシャープは経営危機に陥ったが、その一方で、家電製品だけでなく、景気の影響をうけにくい重電部門なども持っている東芝や日立はその後も健全な経営をしている。
それでも、異常気象をのりきった農家は確かに儲かる。しかし、そんな農家は少ないのである。大多数の農家は収穫量が減り、いくら単価が高くても売上金額は伸びない。かつて野菜が暴騰している時、お客さまから「野菜が高いわねー。儲かってるんでしょう?」と聞かれたことがある。しかし私どもでは、世間の価格とは関係なく一年中ほぼ同じ値段で販売しているため、野菜が暴騰している時でも、うまい汁は吸えない宿命を負っている。
異常気象は今後もたびたび起きるであろう。それに対応できる農家は生き残れるが、それができない農家には厳しい未来が待っている。
(文責:鴇田 三芳)