第114話 災い転じて福と成す

百姓雑話

雪の日の畑今月8日、何十年ぶりかの大雪になり、農場周辺では40cm以上も積もった。写真のように、70cmくらいの高さがあるビニール・トンネルがほとんど埋もれてしまった。温暖化のためか、あるいは寒冷化のためか、根本的な原因はわからないが、人間も野生の生き物たちも、大雪にはほとほと悩まされる。

今回は、大雪になると覚悟し事前に積雪対策をとっていため、あまり被害はでなかったが、ほとんどの野菜が雪に埋もれてしまい、収穫に苦労した。分厚く積もった雪を手とスコップで取り除かなければならず、両手はちぎれるような痛さに襲われ、雪に足をとられて足腰に大きな負担がかかった。販売はいつもどおりに続けたが、時間の制約で収穫できないものもあり、お客様にご迷惑をかけてしまった。

また、もう一つの悩みが生まれた。積雪のために土がいつまでもじめじめし、計画どおりに作付けられないことである。育苗ハウスの中に所狭しとある苗は植えられず、小松菜やほうれん草、大根などの種まきは滞ってしまった。そのため、4月中旬からの約1ヵ月間は収穫量が減り、またお客様に不便をお掛けしてしまいそうである。ハウス栽培であれば天候などの自然災害を受けにくく、こんな問題は起きないが、露地栽培では台風シーズンから立春頃まではとても難儀する。

しかし、積雪は悪いことばかりではない。少なくても、2つの効用がある。まず、畑やその周辺に生き残っているアブラ虫を減らすことができる。今回は、越冬ブロッコリーの一部に大量のアブラ虫が発生してしまった関係で、積雪の直前にそのブロッコリーを撤去し耕しておいた。これでアブラ虫は1匹も生き残れない。残酷なようだが、農薬を使わない農業の現実である。

また、二つ目の効用は、積雪が土を良くすることである。特に皆生農園では冬の間に畑に米糠を直接まいて土づくりをしているのだが、米糠の分解の過程で微生物が急速に増えるため、土の中の水分が不足しがちになる。そのような状態で積雪があると、積もった雪が徐々に溶けていくので、その不足を十分に補ってくれ、土の改善が一気に進む。

さらにもう一つ、農家にとっての効用がある。私どもは販売単価をほぼ一定で直売しているので余り関係ないのだが、野菜の値段が高騰することである。先に述べたように、積雪が解消するまでは収穫や作付けができないためである。

農業は自然相手の職業である。どうあがいても自然の力を超えることはできず、いつも良好な条件下で栽培できる訳ではない。次から次といろいろな苦難に直面する。

しかし、そんな時でも、より少ない出費と労力でその課題や問題に立ち向かい、「災い転じて福と成す」ことができるか、そこが職業人としての力量が問われる点である。

(文責:鴇田 三芳)