第126話 3つの「乏しい」と3つの「ない」

百姓雑話

かつて、第69話の「七つの力」で、新規就農者が営農する際に必要な「力」について述べた。それらは、財力、体力、忍耐力、基礎学力、思考力、人間関係力、そしてコミュニケーション能力の7つである。

これらの中で、特に必要と私が思っているのは、忍耐力、基礎学力、思考力の3つである。これらに乏しい人は、相当な財力がない限り、農業参入を再考した方が良いだろう。容赦のない自然の脅威、病害虫や雑草との闘い、他の農家との競合、激しい低価格競争、なかなか休日などとれず過酷な肉体労働の連続などが前途に待ち受けている。どれをとっても、実に手ごわい。昔から続けてきた農家が次々に辞めていくのも当然である。だから、こんな業界で生き抜くには相当な忍耐力がいる。

また、基礎学力と思考力の重要さは何も農業に限ったことではない。どんな業界でも欠くべからざる能力である。ただ、ここで私があえて挙げたのは、農業に就きたいと希望する人の中に少なからず基礎学力と論理的な思考力に乏しい人がいるからである。

では、これら3つの能力が備わっていれば就農しても大丈夫かと言えば、現実はそう甘くない。どうにか生活できる程度の所得を確保するには、少なくても3つの「ない」を常に意識し、可能な限り実行しなければならない。

それは、まず無駄なコストをかけないことである。コストと言えば「お金」を連想しがちだが、手間も忘れてはいけない。農業の指導書や参考書、あるいは学校の先生や農業指導者は手間も重要なコストであることをほとんど指摘しない。先生や農業指導者はもちろん、指導書や参考書を執筆する人たちの多くは農業で喰っている訳ではないからある。コスト意識が甘くなるのも当然である。

2つ目の「ない」は、できるだけ失敗しないことである。土づくりに努め肥料を適切に施し種を蒔き、その後いくつかの管理作業を行なっても、病害虫や雑草、あるいは自然災害などの被害にあい収穫までこぎつけなければ、結果的には失敗なのである。その間の努力は徒労に終わり費用が逃げていくのだからマイナスなのである。

そして最後の「ない」は安易に諦めないことである。限度を超えない範囲で、とにかく諦めない。

(文責:鴇田 三芳)