この頃から、トラクターの使用頻度が増え始める。15種類以上の秋冬野菜を次々と作付けるためである。
トラクターで耕していると、地表や土の中から、いろいろな生き物が現われる。野菜に被害を与える虫は、草食性のため、トラクターの音や振動にあまり反応しない。しかし、肉食系の小動物は必死にトラクターから逃げていく。その代表がクモとハサミムシである。これらは害虫を食べてくれるので、引き殺さないように注意しながらトラクターを操作する。必要であれば、トラクターから降りて、脇に逃がしてやる。
そして、残酷なようだが、害虫は見つけたら、一匹一匹手でつぶしていく。この時期よく見かける害虫は、ヨウトウムシの蛹(さなぎ)、そしてネキリムシとコガネムシの幼虫である。
写真のネキリムシは、夜の間に植物の茎を地ぎわから食べてしまう。小松菜やほうれん草のように、大量に種をまく野菜には大きな被害は出ないが、ブロッコリー、キャベツ、レタスなど、苗を点々と植える野菜は、放置しておくと、全滅してしまう。
ヨトウムシの蛹は、8月から成虫になり、これまた甚大な被害を及ぼす。秋に発生する害虫の代表格である。
コガネムシの幼虫は、ネキリムシと同じように、地表から1cmくらい下の根を喰いあらす。また、成虫になると野菜の葉を食べるので、なおのこと厄介である。
春から秋にかけて畑に草を茂らせると、これらの害虫が一気に繁殖する。それらを放置したまま野菜を作付けると、惨憺(さんたん)たる結果をまねく。農薬を使わない場合は、全滅することもある。草の管理を怠たると、結果は正直に現われる。
しかし、有機農業を実践している者は草を甘く見る傾向がある。いたるところ草ぼうぼうの状態になっていることも決して珍しくない。そのような農民は、研修生をただ同然で使っているなら営農し続けられるかもしれないが、自立した一人の職業人としては不適格ではないだろうか。
(文責:鴇田 三芳)