第140話 夏をのりきる10の対策

百姓雑話

旧のお盆が過ぎ、猛暑のなかにも時折、秋風が汗ばむ体をスーッと撫でていく。しかし、これからが夏バテにもっとも気をつけなければならない時期である。

今話では、前話の「目標とストレス」に関連した話題を書く。紙面の制約があるものの、できるだけ具体的に、かつ実践的に述べたい。

夏は強い日差しと高温のため、露地栽培の農家は稼ぎ時である。しかし、人もそうだが、野菜も夏バテする。それを防ぐ対策をとり、しっかり夏をのりきれれば、農業で生計を立てるのも難しくない。その対策とは、高温、強風、強烈な日差し、乾燥、病害虫、大雨、草、人手の確保、販路の開拓、そして労働者自身の健康管理である。

夏野菜と言えば、キュウリ、ナス、オクラ、トマトなどの、おもに実のなる果菜類である。キュウリとナスは、暑さには負けないのだが、土の乾燥と強風に弱い。したがって、土を露出させないように地面をポリエチレン・フィルムや藁、草などで覆いときどき散水する。散水はダニの増殖を抑制する働きもある。また、強風で実が擦れると販売しにくくなるので、ネットか緑肥植物で防風することも不可欠である。

トマトは、高温過ぎると花が咲いても受粉しにくくなる。受粉しても膨らんだ実が強い日差しで焼けたり、タバコガという害虫に喰い荒されてしまう。また湿気と雨に弱いトマトは、多雨によって疫病を発症しやすく、また実の割れもおこす。露地トマトの無農薬栽培は極めて難しく、採算性を考えたら、販売を目的とした栽培はやらない方が良い。それでも、露地トマトの無農薬栽培にチャレンジするのであれば、排水性の良い畑に作付け、ポリエチレン・フィルムか藁などで泥はねを防ぎ、畑の周囲を防風ネットかソルゴーで囲い、防虫ネットで害虫の侵入を防ぎ、必要なら日差しの強い時は遮光材で覆うことである。

また枝豆は、収穫が8月上旬から9月上旬の場合、高温、強烈な日差し、乾燥、害虫の対策が不可欠である。関東平野では、これらの対策を施さないと旧のお盆から9月中旬の出荷はとても無理で、生産量が極端に落ち込む。需要の多いこの時期に出荷できれば、大きな利益を確実に得られる。

さらに、夏の代表的な葉物野菜と言えば、モロヘイヤ、エンサイ(別名:空芯菜)、大葉がある。エンサイは東南アジアの湿地に自生している野菜のため、十分な潅水が欠かせない。モロヘイヤと大葉は乾燥に強いが、販売を目的とした場合はやはり散水する必要がある。これを怠ると、収穫量が減るだけでなく、害虫のダニが発生して、売り物にならなくなる。これらの葉物野菜も、もちろん、防風対策が欠かせない。特にモロヘイヤと大葉は強風で葉が擦れ、これまた売り物にならなくなる。

草対策の必要性は改めて言うまでもないだろう。イネ科の雑草には基本的に病害虫が発生しないが、その他の雑草には病害虫が発生しやすく、秋冬野菜に悪影響を及ぼす。

上記のような7つの対策を十分にとっても、人手の確保、販路の開拓、そして健康管理がうまくいかなければ、売上は伸びない。特に健康管理で気をつける点は、早寝早起きと昼寝を励行し、昼休みを十分取り、10時頃から3時頃までは基本的に外での仕事をしないことである。また、熱中症を防ぐために、適切な水分をしっかり摂取する。もし頭痛がし始めたら、それは熱中症の前兆なので、冷たい水でシャワーを浴び、首や額、脇などを冷やす。自分自身の体調をしっかり把握し、健康を管理できない人は夏をのりきれない。

(文責:鴇田 三芳)