第141話 短い命

百姓雑話
これはテストえです

8月上旬の早朝、森に囲まれた畑の一角に、いつものように車を停めた。すると、そのすぐ脇の森の中から猫の鳴き声がする。そっと覗きこむと、可愛い4匹の子猫がいた。2週間ほど前にお腹の大きな猫がこの近くで横になっていたので、どこかで生んで、ここに連れてきたのだろう。子猫たちが、私の気配を親と勘違いしたのか、写真のように先を争うようにこちらに身をのりだしてきた。動物好きの私にとっては、天使たちが降臨してきたようであった。

しかし、とても気がかりなことがあった。子猫たちのいる場所が危険な道から5メートルほどしか離れていないのである。以前、百姓雑話の第115話「自由と代償」で触れたように、昨年末からの数カ月の間に、この場所で猫が3匹も車に引かれたのである。道を挟んで反対側の家で飼われている母猫が、夜な夜な危険な道を渡って子猫たちの元に来る時、車に引かれるかもしれない。あるいは、子猫たちがよちよち歩き始め、母親を追って危険な道に出れば、ひとたまりもない。

何もせず自然に任せるのがいいのか、一刻も早く飼い主を見つけるのがいいのか悩み、野良猫を何十匹もボランティアで世話しておられる方に相談した。アドバイスに従い、段ボール箱で小屋を作り、それに子猫を入れ、危険な公道から少し離れた所に移動させた。

毎朝、天使のような子猫たちをこっそり覗くのが楽しい日課になった。ところが、小屋を作ってから1週間ほどたった朝、子猫が3匹になり、その翌朝には2匹になっていた。たぶん、母猫が夜の間に別の場所に連れて行ったのだろう。

そして次の朝、子猫たちを確認しようと覗くと、小屋の外で2匹が寄り添うように亡くなっていた。他の2匹の子猫がいる場所へ戻る母猫の後を追いながら、息をひきとったのだろうか。短い命であった。

「自分のしたことで、この2匹は親から見捨てられたのかもしれない」と思うと、心が締めつけられる。

(文責:鴇田 三芳)