先月23日、NHKラジオの「日曜討論」を聴きながら、いたく同感しました。テーマは「需要回復 これからの観光は?」で、論点は日本の観光業が抱える問題点と解決方法でした。その中で、星野リゾート代表の星野佳路氏は、「日本では、年末年始やゴールデンウイーク、夏休みなどの特定の時期に需要が殺到し他の長い期間は閑散としている。そのために、通年の収益性がきわめて低く、雇用も安定しない。」という根本的な問題を指摘し、その解決策として何度も力説していたことは観光需要の分散化でした。
日本の農業が抱える根本問題の一つがまさにこの点です。
日本の農民人口は、昭和30年代をピークに減り続けてきました。特に今世紀になってからは減少が著しく、20年ほどで35%ほどになりました。減少と並行して、農家の兼業化が進み、今や日本の農家の大半は兼業農家です。いわば、半農半Xという労働形態が定着しています。
その典型例が小規模な稲作農家です。機械と農薬と化学肥料の普及によって、のべ労働日数は10日間から2週間ほどで、田植えと収穫の時期に労働が集中します。
戦後、わが国は焼け野原から急速に経済復興しました。それに大きく寄与したのは農村から工場などへ流れ込んだ労働者です。農民を捨てた若者たちが大半とはいえ、家族を農村に残して農閑期に東北地方などから出稼ぎにきた兼業農家もかなりの数でした。この後者は半農半Xという労働形態を選んだ農民です。
まさに半農半Xが、農民家族を支え、農村をどうにか維持し、農地の荒廃を防いできたのです。
次話では、今後の日本の農業と農民の将来に焦点をあわせ、半農半Xを勧める背景と理由を述べます。
(文責:鴇田 三芳)