第375話 野菜が警告する温暖化

百姓雑話

この頃は、「地球温暖化」という表現に加え、「気候変動」という言い方も増えてきました。いずれにしても、表現はどうであれ、地球規模で気温が上昇していることは間違いありません。

今年でラニーニャ現象が3年も続き、日本では大きな台風被害がなく、異常に暖かい秋でした。気象庁によると、11月の平均気温は観測史上もっとも高かったそうです。そのため、野菜の生育が進み供給過剰となり、値崩れ状態です。肥料や燃料などの値上がりとのダブルパンチで農家は苦しめられています。

当地も異常に暖かい秋でした。木枯らしが吹かず先月は霜がおりていません。今朝うっすらと初霜がありました。こんなことは初めてです。そのため、畑の野菜たちにもいろいろな異常が見られます。

写真のように、ナスが11月下旬まで収穫でき、例年は1月から収穫するブロッコリーがもう採れ始めました。2月に収穫する予定のホウレンソウやコマツナももうすぐ収穫できそうです。さらに驚いてことは、本来なら4月から採れる露地イチゴがもう赤くなり、玉ねぎがすでに大きくなり始めています。初めてです。秋の彼岸頃に咲く菊と違い食用の春菊は春に咲きますが、その春菊に蕾(つぼみ)がつきました。30年以上営農してきましたが、これらの現象は初めて見ました。異常を超えて、異様にすら見えてしまいます。

その異様さは、急速な温暖化に適応できない野菜が愚かな人類に警告しているように私には見えてなりません。

パキスタンでは、6月から例年の10倍以上も雨が降り続き、国土の1/3ほどが水没。9月2日時点で子どもを含む1,200人以上が死亡し、3,300万人以上が被災したそうです。仕事で何度かパキスタンを訪れたことのある私は、何か他人事ではないように思えます。

その一方で、先月エジプトで開始されたCOP27(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議)では温暖化対策の具体的な進展がなかったと報道されています。それもそのはず、脱炭素に前のめりだったドイツでさえ、ウクライナ戦争によって供給不足になった天然ガスによる発電から石炭発電に後戻りし始めたのですから。

結局、身勝手な先進国がその発展のために温暖化させたツケを途上国が払っている構図です。人類は「早い者勝ち」、「強い者勝ち」という文明から抜け出せずに今にいたっているのでしょうか。

(文責:鴇田 三芳)