第142話 問題製造業

百姓雑話

これからの2ヵ月は年間でもっとも厄介な季節である。とりわけ台風による暴風と害虫による被害は悩ましい。前者は、野菜の被害だけではなく施設を破壊することもあるので、なおさらである。農業の宿命とはいえ、厳しい現実である。離農する農民が後を絶たない原因の一つになっている。脱サラして20年以上も農業を続けてきた私だが、この季節には何度も挫折しそうになった。びしょびしょになりながら暴風雨の中で敢行する強風対策は、やったことのない人には想像もできないほど過酷である。時には、命がけの作業もしなければならない。

もとより、農業は自然相手の職業である。特に露地で有機栽培すると、上述のように天候や環境などの自然の影響をまともに受けてしまう。いくら知恵をしぼり際限なく働いたところで、避けがたい問題が頻繁に発生する。

ところで、世間一般にも問題が山積している。人類の未来を危うくする問題を数えあげただけでも、両手で足りないほどである。社会や自分の将来に明るい希望を見出せず、いつも不安にさいなまれ仕事に追い立てられているため、精神を病んでしまう人が増え続けている。当然である。普通の人間はそんなにタフではない。

まったく、問題が何故こんなにも多いのだろうか。

4年前の9月、台風の直撃を受けて甚大な被害をこうむった。その無残な畑を見回りながら、世の中に問題が絶えない原因は何であろうと考えてみた。へそ曲がりの私は、「あえて問題を作る人々がたくさんいるからだ」という結論に行き着いた。合法的に、かつ公然と問題を作る職業や制度が少なくないように思えるのである。

近年では、世界経済をガタガタにしたリーマン・ショックやアメリカ軍などによるイラク侵攻が顕著な例である。また、日本にはほとんど存在しなくなったが、あえて壊れやすい製品を作る会社もある。さらには、人の健康を取り戻すべき病院でさえも、病人を作ってしまうことがある。いわば、「問題製造業」とでも言える産業が世界規模で形成され、それによって莫大な富を得ている人たちがたくさん存在している。

残念ながら、政治家やマスコミ関係者などの中にも問題製造業に携わっている人々がいる。本来、政治家とは集団の利害対立や問題を解決するために存在しているのだが、政治が職業化するとともに、より多くの政治家を養うためか、あるいは政治家の権威を高めるためなのか、あえて問題を作るようになった。上記のイラク侵攻もその例かもしれない。結局、侵攻の理由であった大量破壊兵器は見つからず、アメリカの力を誇示し死の商人を儲けさせるために、無実の市民を大量に殺傷しただけであった。

視線を身近なところに移せば、近年の日中関係の政治的悪化もその例であろう。時が解決してくれるだろうという期待を込めて賢い政治家が領土問題に蓋をしたのに、さしたるヴィジョンもないまま開けてしまった。これ程までに経済的な相互依存と人的交流が進んだ中国と日本があえて事を構える必然的かつ合理的な理由を平凡な市民の私には見出せない。

できれば、こまごまとした日々の仕事をこなしている時、あるいは満ち足りた食事をしている時、そのことがどこかの他人に問題を押しつけているかもしれないとイマジネーションを働かせたいものである。

(文責:鴇田 三芳)