「あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかな・・・・・・・」 スガシカオが作詞し、スマップが歌った「夜空ノムコウ」です。これを聞くと、今でもジーンと心に響いてきます。
何を信じるか。これは、人生を生き抜くうえでも、そして仕事をするうえでも、とても重要なことではないでしょうか。何も信じられず、最後の拠りどころである自分さえも信じられなくなってしまった人たちが世間にはたくさんおられます。年間3,000人近くの人たちが自殺している現実がそれを物語っています。自殺者の中には、人間関係のもつれで人間不信に陥ったり仕事などのストレスにより鬱病などの精神疾患を患ってしまった人たちが高い割合で含まれているでしょう。
農業を営むうえでも、「何を信じるか」が非常に重要になります。趣味ではなく、一定以上の所得を目的にすれば、相当な信念がないと続けられません。何かを信じ、常にそれを念じていないと、挫折が背後からこっそり迫ってきます。
では、何を信じるか、です。もちろん、自分自身を信じることは大前提です。忍耐力とか、体力とか、経験や知識とか、思考力とか、一定以上の資金力とか、さまざまな面において自信を持ってないと、自営農業の継続は難しくなるでしょう。
そして、もう一つ指摘したいことがあります。それは、「生命力を信じる」ことです。すべての生き物が持つ生命力を信じることです。農業は生き物を扱う職業だから、当たり前と言えば当たり前のことと思われがちですが、私の知る限り、生命力を明確に意識している農民は非常に少ないようです。そのためか、害虫や病気が発生すると、躊躇しないで農薬をかけます。実際には、害虫や病気が発生していなくても「防除」という名目で、定期的に農薬を使用しています。もはやそこには、生き物を扱っているという意識を見出せません。上の写真は、7月下旬ころ空芯菜(クウシンサイ)に発生したハスモンヨトウの幼虫です。「生命力があり厄介だ」とほとんどの農民は思っています。しかし、生き物たちのバランスがとれていると、これを食べる昆虫や小動物、あるいは微生物が存在していて、ハスモンヨトウはなかなか生き残れません。カマキリやアマガエルなどの餌食になってしまいます。
農産物は工業製品とは違います。生き物から得られるものです。
(文責:鴇田 三芳)