私たちの身の回りには、少なくても三種類の毒がある。空気毒、飲食毒、環境毒である。
半月ほど前に御嶽山が噴火したが、その際に硫化水素が大量に噴出された。人命をいとも簡単に奪う有毒ガスであるが、幸い私たちの日常にはほとんど存在していない。いま私たち日本人のもっとも身近にある空気毒は5つある。たばこの煙、車などの排気ガス、スギ花粉やダニなどのアレルゲン、密閉された室内の空気、そして中国から飛来する黄砂とPM2.5である。前の2つは近年改善されてきたが、後の3つは年々深刻になっている。ある記事によると、中国人が移民する主な理由の一つが、空気汚染に代表される環境汚染であるという。
二つ目の「飲食毒」も私の目には深刻に映っている。浄水器を通さないと飲めないような水を「飲料用」として堂々と売っている水道関係者は恥ずかしくないのだろうか。電力業界と同様に、独占体制が産む弊害のように見える。
また、政府やJAなどが「安全・安心な日本の農産物をもっと輸出しよう」と力を入れているが、日本の農薬使用量から考えて、掛け声ほどには輸出量が伸びるはずもない。それは、スーパーなどに出回っている農産物を見れば、一目瞭然である。農薬の使用状況が具体的に明示されている農産物を探しても、ほぼ皆無である。明示すると消費が落ち込むと懸念され、未だに表示されていない。長寿国の日本では、たぶん、将来にわたって表示されないであろう。
余談だが、「日本食が長寿の秘訣」と日本食を称賛する人たちがたくさんいる。しかし、それは、「日本に出回っている食材が長寿の秘訣」と必ずしもイコールではない。長寿の理由はそんなにも単純ではない。手厚い医療サービスと温暖な気候の方が日々の食事よりも長寿に貢献していると私は思っている。
三つ目の環境毒は、「自然毒」と「社会毒」とがある。デング熱にかかる患者が日本にも出始め、改めて蚊による伝染病の危険性が注目されているが、病気のもとになる細菌やウィルスはもっとも身近な自然毒である。クモやヘビ、ハチなどの動植物の中にも毒のある生物はいても、日本ではさして大きな問題にはなっていない。
そして近年、1990年代に右肩上がりの経済が崩壊してからというもの、日本人にとって社会毒がいっそう深刻になってきた。「パワ・ハラ」や「セク・ハラ」に代表される毒々しい言葉の暴力は増加の一途である。市民の代表である議員の中にも、常軌を逸したようなヤジを飛ばしても、平気な顔でいる議員がいる。また、マスコミや銀行などの金融機関の努力を尻目に年々増え続けているオレオレ詐欺、これまた増え続ける非正規労働者と収入の格差、・・・・・・・・・・・・・・。挙げたらきりがない。
(文責:鴇田 三芳)