やっと楽になった。草との闘いも終わり、害虫や病気の被害もこれからは、まず心配ない。もちろん、農薬を使う農家もほっとする。残る心配は台風と価格の暴落だけである。台風被害が出ると価格は暴落しないが、出なければ必ず暴落する。将棋で言えば、まさに王手飛車取りのようである。いずれにしても、中秋から初冬は「労多くして益少なし」の時期である。
ところで先日、「どうやったら害虫を根絶できるんだろうね」と、近所の親しい農家に尋ねてみた。すると予想どおり、「そりゃー、無理だんベー」と即座に返ってきた。殺虫剤を長年使ってきた農家にとって、害虫の根絶などは発想外であろう。「野菜に害虫はつきもの。農薬は不可欠」という固定観念が骨の髄まで染みついてしまっている
しかし私は、今までの経験から、地域の農家が協力し合えば、害虫を地域的に根絶できると思っている。すべての種類の害虫とまではいかないまでも、かなりの種類の害虫を地域的に根絶するのは可能である。それらの害虫とは、ネコブセンチュウ、アブラ科の野菜につくモンシロチョウやコナガなど、アブラムシ、ネキリムシ、そして、雑食性のハスモンヨトウである。
かつてエン菜(別名:空芯菜)は、収穫が始まると防虫ネットを撤去するので、8月上旬にハスモンヨトウが大量に発生し、あっという間に全滅してしまった。しかし、3年続けてハスモンヨトウのフェロモン・トラップを仕掛けた結果、今年は1ヘクタール以上の農地でハスモンヨトウの発生箇所は数えるほどしかない。
上の写真は、10月中旬時点のエン菜である。6月19日に植えてから、防虫ネットをかけていないので、ハスモンヨトウが一カ所に発生したものの、アマガエルとカマキリがあっというまに食べ尽くしてしまった。写真をよく見ると、食害された痕跡を見つけられるが、まったく問題ない。今では、害虫が激減したため、アマガエルは他の場所に移動し、カマキリが1匹いるのみでる。
もちろん、食物連鎖の中で害虫にも重要な役割があるので、根絶するのは問題であるが、農薬を使わなくても済む程度に激減させるのは許されるのではないだろうか。地域ぐるみで対策を施し発生を激減させ殺虫剤の使用を止めるか、今までのように作物に発生したものを農薬で殺すか、その選択のように思える。
最後に余談だが、人類は実に多くの生物を絶滅させてきた。日本中いたるところで見かけたというオオカミやトキ、カワウソはすでに絶滅してしまった。あの巨大なマンモスも人類が絶滅させたという。かろうじて絶滅の危機を乗り越えたものも、その多くは人間が捕獲を止め保護活動を行なったからである。
本当に人類は、他の生物との共存が実に苦手な生き物である。
(文責:鴇田 三芳)