第156話 高い健康から安い健康へ

百姓雑話
これはテストえです

今年の秋はとても暖かかった。記録的な暖かさが続いたため、野菜がすくすく育ち、ほうれん草や小松菜などの葉物野菜が例年より3週間以上も早く採れた。その結果、スーパーなどの野菜の値段が暴落している。収穫したくなくなるくらい、とにかく安い。マスコミは、値段が高騰した時は報道するが、こんなに安くて農家が困っていても報道しない。マスコミは、基本的にマジョリティーの立場から社会を見ているので、農家よりも消費者の立場を擁護するのである。マスコミの中立性は今も昔も幻想である。

さて、ここからが本題である。日本人の平均寿命は、男女とも80歳を超え、女性は世界一である。気候が温暖で治安が良いことに加え、食べ物の質が良く、高度な医療サービスが手軽に受けられるためである。

しかし、それにしても、日本の食費は高い。高い健康コストを日本人は払っている。本来、日常的に命をつなぎ健康を保つ食べ物の値段は安い方が良い。安くても農家が生活でき再生産できるのであれば、安い方が良いのである。欧米やオーストラリアなどの先進国では、諸物価に比べ食料品の価格が安い。それでも、農業はしっかり生き続けている。食料自給率も日本より高い。

さらに、日本の医療費も高い。これまた日本人は高い健康コストを平気で払っている。日本の行く末を考えれば、どうにかしないといけない。個々人の生き方を変え、また国策を変更して、もっと安く健康を保てるようにしないと、将来は暗くなる一方である。

例えば、一人ひとりがもっと健康に関する知識を持ち自分の健康状態に敏感になり、できるだけ薬に依存しないように生活しようではないか。どうしても薬が必要な時は安いジェネリックを希望しよう。幼子や高齢者、内臓疾患のある人は風邪でも危険だが、そうでなければ風邪やインフルエンザくらいで病院に行くのは止めよう。新薬の開発では、もっと的を絞りこみ投資資金の効率を高め無駄を減らし、国が定める薬価を下げよう。これらの努力によって、医療関係につぎ込む税金は必ず減る。安い医療費の実現である。

さらに、今後とも日本の人口は減る一方であり国内の経済規模は縮小していく可能性が大きいのだから、必要性の低いインフラ整備に巨額の税金をつぎ込むのはもう止めよう。造れば、多額の維持費と修繕費、そして解体費を将来世代に負担させることにもなる。

これら、医療とインフラ整備に充てる税金が減った分を専業農家や専業の農業法人への所得補償に充てよう。そうすれば、農産物の価格は必ず下がる。これで、安い食費も実現する。

そして、もう一つ。教育内容も変えよう。ほとんどの大人にとって役に立たない授業の時間を減らすか選択科目にし、その分をもっと健康の授業にあてよう。社会に出て、はたして何割の人が微分や積分を必要としただろうか。

(文責:鴇田 三芳)