第162話 冬(2)

百姓雑話

前話の最後に、「冬こそ勝負の時である」と述べた。もちろんこれは、私のような農民に限ったことではない。厳しい冬が重要となる職業はたくさんある。そして冬は、人だけでなく、ほとんどの生き物にとっても厳しい季節である。

例えば、本来は肉食が好みの野鳥でさえ、好きな食料が不足する冬場は野菜も食べる。写真は、ヒヨドリがホウレン草を食べた跡である。ヒヨドリの被害を減らそうと、ホウレン草にネットをかけたり、精米業者から頂いたクズ米を毎朝あげたりしている。そのクズ米には、ヒヨドリだけでなく、スズメ、ハクセキレイ、ヒバリ、ウグイス、メジロ、そしてカラスなどが訪れる。

ところで、地球の長い歴史を振り返ると、やはり厳しい冬の季節が何度も訪れていた。氷河期や氷期と呼ばれている期間である。現代は比較的暖かな間氷期にあたる。生き物が生息しやすい間氷期は、その名のとおり寒い期間の間の端境期のようなもので、氷河期や氷期よりもはるかに短かったらしい。そして、約22億年前と6億年前には、地球表面すべてが凍りついた期間があったという。いわば、桁違いの冬が延々と続いたようなものである。その結果、地表の生物はすべて死滅し、深海で生き延びた生物が私たちにつながっているという説が近年唱えられている。

現代に視点を戻せば、私たち人類は、経済発展にともなう物質的な豊かさのはてに、再び厳しい社会状況に直面している。貧富の格差に代表される経済の冬が、社会の冬をもたらし、心まで凍りつかせようとしている。

最後に、冒頭にあげた野鳥たちの行動を述べて終わりにしたい。ヒヨドリのように、好きではないホウレン草を仕方なく食べて命をつなぐ鳥がいる一方で、カラスは、力ずくで他の鳥たちを追い払い、葉っぱよりもおいしくカロリーのあるクズ米を独占する。そして写真のように、独占したクズ米をその場で食べるだけでなく、物陰に隠しておく。また、スズメなどの小鳥たちは、自分よりも大きく強い鳥たちの目を盗んで、とにかく食べられそうな物であれば、何でも口にする。それぞれが、限られたチャンスをとらえて、厳しい冬を必死に乗り越えていく。

ひるがえって自分は、厳しい社会の冬をどのように乗り越えていくつもりなのか。それが問題である。

(文責:鴇田 三芳)