第367話 日本の食料リスク(1)

百姓雑話

数十年も前から、日本の食料リスクに対する指摘がありました。

その一つは食料自給率の低下です。農民は減り続け、耕作放棄地は増え続け、米以外の穀物生産は減少し続けてきました。農林水産省によると、2020年度の食料自給率はカロリーベースで37%になったようです。OECD加盟国の中では、日本と韓国が最下位です。

漁獲量も、乱獲による不漁にくわえ、中国、ロシア、台湾、朝鮮などの近隣国に漁場を奪われ、1990年ころを境に減り続けています。今やピーク時の3割くらいに減り、魚介類の自給率は60%前後になりました。

近年では、農産物や海産物を輸入しようにも、中国に買い負けて、思うように輸入できません。例えば、日本人の食事に不可欠な大豆は、ほとんど輸入に頼っていて、年間約340万トン(農林水産省、2019年データ)です。その一方で、なんと中国は約1億トン(農林水産省による2021年の予測)も輸入しているそうです。これも中国に買い負けた結果でしょう。

こんな現実が進行しても、有効な手立てがこうじられないまま、今にいたっています。国政選挙の争点になったことありません。それは、リスクが現実のものとして問題化しないうちは、ほとんどの人はリスクを意識の外へ押しやってしまうからです。人の本性として、ついつい見たくないものからは目をそらすのでしょう。

それがここにきて、否応なく直視しなければならなくなりました。2020年からのコロナ禍による世界的な物流の減少、天候による穀物収穫量の減収、そしてウクライナ戦争による今年の作付け不安と、たて続けに世界的な異変が発生したために、身近な食料品が次々と値上がりし始めました。

食料品に限らず石油などのエネルギー資源の国際価格の高騰に円安もくわわり、さまざまな物価がじわじわ上がり、所得は増えず、庶民の生活は苦しくなる一方です。

上述の食料リスクは一部に過ぎず、日本が内包する食料リスクはいくつもあります。近い将来、リスクが現実化し、食料危機が日本の庶民を襲う可能性は十分あると私は思っています。

次話から、日本の庶民が直面している、あるいは直面しそうな各種の食料リスクを具体的に考察したいと思います。

(文責:鴇田 三芳)