第334話 露地栽培トマト

百姓雑話

細菌、ばい菌、乳酸菌、虫歯菌、大腸菌、・・・・・・・・。「菌」という言葉は私たちの日常でもたくさん使われ、どちらかと言えば、良くないイメージをおびています。古くは、結核菌やコレラ菌などの伝染病が日本でも深刻な病で、結核は「不治の病」とまで言われました。

しかしその一方で、他の生物と共存する菌も無数に存在しています。私たちの体に棲みついている菌などの微生物は私たちの細胞の数よりも多いと言われています。まさに、私たちの体は菌の活動なくして維持できないのかもしれません。

農業でも同じです。作物は、良くも悪くも、菌などの微生物と共存しています。したがって、作物の出来は菌との関係が大きく影響します。

梅雨時は菌の活動がとても活発になり、作物に病気が発生しやすくなります。農薬を使わない私にとって、病気の発生を抑える対策は不可欠です。とりわけ露地栽培のトマトに発生する疫病は非常に厄介です。症状が出はじめても放置すれば、ほぼ1週間で全滅します。

今から10数年ほど前までは、農林水産省が規定する有機農産物ガイドラインで使用が認められた農薬(ボルドー)を使用して、どうにかトマトの疫病を抑えていました。しかし、その使用を止めてからは、疫病に悩まされ続けてきました。

何度も失敗しました。それでも、気を取り直し、考えをめぐらし、いろいろ試行錯誤し、発生を抑える栽培方法にやっと目途が立ちました。2年ほど前のことです。今年は、例年以上にしとしと雨が降り続いてきましたが、今のところ疫病は発生していません。先月中旬には収穫が始まり、地下部と地上部のバランスが徐々に取れてきたので、たぶん今後も病気は発生しないと思っています。

しかしそれでも、予報では梅雨明けが今月下旬にずれこみそうで、心配です。後はトマトの生命力を期待するしかありません。

(文責:鴇田 三芳)