「イマジン」。”Imagine there’s no Heaven It’s easy if you try・・・・・”と始まるジョン・レノンの名曲である。この歌は、アメリカの若者がベトナム戦争に疲れ果て、先進国の若者たちが反体制運動に没入していった時代を色濃く反映していた。大学に入学したての頃、自分が所属していた学部でも大学紛争で休講が相次いだ。ノンポリであった私でも、時代の潮流を確かに感じとれた。
この歌は、「国もなく、殺し合うこともなく、宗教もない、そして、誰もが平和に生きている世界を想像してごらん・・・・・」と続き、宗教に懐疑的であった私の胸に強く迫り、サラリーマンを辞めてからの人生を導いてきた。
カンボジア内戦時にポル・ポト政権による大量虐殺を描いた映画「The Killing Fields」のラスト・シーンでこの歌が流れると、何度見ても涙が溢れてくる。その映画の中で、もっとも印象的に残ったのは、ポル・ポト政権側の者がある男性に銃口を向け殺そうとした時、その男性が祈るようなポーズで命乞いするシーンである。
ポル・ポト政権は共産主義に依拠し宗教を否定し、何百万人もの人民を虐殺した。共産主義に元祖・ソ連でも、共産革命からスターリンによる粛清にいたる過程で、やはり膨大な数の人民が殺害された。中国共産党もソ連と同じような歴史をたどり、毛沢東が誘導した「文化大革命」では数千万人もの人民が命を落としたと言われている。
宗教に懐疑的であった私だが、こんな共産主義国家の現実を知るにつけ、先の映画を見た後、2年ほどキリスト教教会に通いつめた。人は変われば変わるものである。今では、特定の宗教を信仰している訳ではないものの、人を超越する存在――――それを神と呼ぶなら神かもしれない――――を私は受け入れるようになった。
思い起こせば、自然農法を提唱し実践されてこられた故・福岡正信氏は「植物に神が宿っている」と言われた。その氏をアフリカのソマリアにあった難民キャンプに案内した時、私は初めて砂漠に見た。その砂漠の夜、砂の地面に布を敷き仰向けになって夜空を見上げると、雲のように、あるいは川のように天空を天の川が輝いていた。その時、私は人間が信仰する神よりもさらに偉大な存在を意識した。
そして、思わず祈ってしまった。「私という小宇宙が消滅する時、星の子として我が身を天空に迎い入れてほしい」と。
(文責:鴇田 三芳)