第237話 ペットの餌

百姓雑話
これはテストえです

私はペットの餌も生産しています。正確に言うと、お客様がペット用に野菜を買っていかれるのです。知る範囲で、今までにペットは4種類。ウサギが2例、カメ、アゲハ蝶、モンシロ蝶がそれぞれ1例です。去年からは、動物病院に入退院を繰り返しているウサギ「もも」ちゃんが常連客です。余談ですが、この名前はミヒャエル・エンデ氏の童話「もも」からとったものだそうです。

私は毎年、大葉(シソの葉)を生産し、いくつかのスーパーに出荷しています。通常、大葉はたくさん売れる野菜ではないのですが、なぜか去年からあるスーパーの直売コーナーに出荷した大葉がよく売れ始めました。後に分かったのですが、ウサギのももちゃんのためにYさんが買っていかれたのでした。

家庭菜園などで大葉を栽培したことのある人ならよくお分かりでしょうが、大葉は害虫の被害をとても受けやすく、一般に売られているものには大量の農薬がかけられています。そもそも、大葉は食べるためというよりは、単なる添え物として生産されているからです。パセリも同じです。

そのような農薬事情があってか、私のところの無農薬栽培の大葉をよく食べるそうです。ウサギは嗅覚がかなり発達しているからかもしれません。大葉のない季節は、ブロッコリーの葉や人参の葉をYさんは買っていかれます。ときどき、「今日ブロッコリーの葉を頂けませんか」と切迫した電話を頂くこともあります。我が家でも、特殊な流動食しか食べられない病弱な猫「救(きゅう)」ちゃんを飼っているので、Yさんの切実さは手に取るようにわかります。

今から10年ほど前になりますが、ある小学校の理科の授業でアゲハ蝶が幼虫から蛹(さなぎ)、そして成虫になるまでの様子を観察しようと、学校に近所の農家から人参の葉を頂いてきて食べさせたところ、たちどころに死んでしまったそうです。そこで、インターネットで私のことを調べ、人参の葉を買いに来られました。そして、2度目は見事に成虫まで育ったそうです。

上の写真は近所の農家が最近セロリの苗を植えたところの写真です。株元にまかれた白い粉は、浸透性殺虫剤です。この農薬は、雨で地面に溶け込み野菜の根から吸収され、その野菜を食べた害虫を殺す、という一般的な農薬です。もちろん、その農薬は洗っても調理をしても野菜からほとんど出ていきません。4月から夏かけて出回る人参にはこの浸透性殺虫剤がよく使われるので、上記のようにアゲハ蝶が死んでも何の不思議ではありません。秋から冬に出回るキャベツやブロッコリーにもこの農薬はよく使われます。皆生農園のある地域では、白菜にはほぼ確実に使われるようです。

何も語らない小動物がこんな野菜の危険性を教えているようです。

(文責:鴇田  三芳)