第239話 カラス

百姓雑話

きゅうり畑カラスはとても賢い動物です。「鳥類の中の霊長類」と言われるほどです。その賢さゆえか、ごみを散らかしたり人を攻撃したりと、街中や住宅地ではとかく嫌われ者です。農村地帯でも、やはり迷惑者と思われています。左の写真はカラスにキュウリを食い荒らされた現場です。被害が出た直後に、カラスが警戒する水糸を張ったので、その後は喰われなくなりましたが、今年はナスやトマトも少し喰われてしまいました。数年前、「明日は露地トマトの初どりだ」と喜んで帰宅したら、翌朝カラスの群れに熟したトマトをすべて食べ尽されたことがあります。頭にくるやら脱帽するやら。野菜の食べ頃を実によく知っています。

そんなカラスでも、よくよく観察すると、妙に近親感を抱かせます。

カラスは、基本的に単独か数匹の群れで生きています。それでも、春先と晩秋だけは必ず群れを作り、大空を舞っています。多分、春先の群れは集団見合いなのでしょう。今風に言えば、「合コン」です。晩秋に群れをつくる理由はどうも私には想像できませんが、確たる理由があるはずです。何せ賢い鳥ですから。

カラスの賢さを示す行動は、先の水糸を警戒して近づかないこと以外にも、いくつもあります。例えば、あの鳴き声。明らかに豊かなコミュニケーション能力を持っています。人類が高度な文明を築けた理由の一つがコミュニケーション能力であることを思えば、やはりカラスは「鳥類の霊長類」です。

もう一つ、こんな行動も賢さの例かもしれません。農場に隣接する民家の屋根には太陽熱温水器があり、その背面がステンレスでできているため、鏡のようになっています。その面に映る自分に対して執拗に攻撃する習性があります。多分、敵か何かに見えるのでしょう。

余談になりますが、チンパンジーの前に鏡を置いた場合どのように反応するかテレビ番組で見たことがあります。チンパンジーは、まず鏡の裏側に回り他のチンパンジーの存在を確かめ始めました。何もいないとわかると、鏡に向かってやはり執拗に攻撃しました。

ホモサピエンスと自称する人間も同じような行動をとりがちではないでしょうか。カラスもチンパンジーも人も、似たり寄ったりです。

(文責:鴇田  三芳)